コラム

海外転職は果たした、、海外で働く者のその後のキャリアの悩みとは?

1.海外転職を果たした人のその後悩み

先日タイのバンコクに出張した時にシンガポールに3年、ベトナムのホーチミンに2年、タイのバンコクに3年と海外畑を点々としている田中さん(仮名38歳)の方にお会いしました。海外では現地採用として新事業所の立ち上げを主に経験されタイ語も日常会話程度は話すことができますし、素晴らしい経歴のバリバリのビジネスマンです。ただ彼には悩みがありました。

田中さん:私は今38歳で日本での勤務を希望していますが、なかなか次の職がみつからないんですよ。。私は妻と2人の子供がいるのですが、上の子が来年から小学生になります。出来れば小学校からは日本で育てたいと思っているのですが。。

海外の事業所の立ち上げを経験されている田中さんのキャリアは非常に素晴らしいと思いました。しかし、田中さんに限らず、一度海外現地採用で仕事を下場合、日本での再就職が難しいケースが多いようです。実はベトナムのコンサルティング会社に勤務する僕の前職の先輩も同じ様なことをおっしゃっていました。今回はこの背景に何があるのか探ってみました。

2.なぜ海外経験者の国内就職先が少ないのか?

「なぜ海外経験者の国内就職先が少ないのか?」

上記の疑問は現在海外で働いている人だけでなく、今後海外で働くことを目指している人にとって非常に気になる疑問です。なぜなら家族の都合や志向するライフスタイルの変化によって日本で再就職を希望する可能性は誰にでもあるからです。

この点について、シンガポールの人材紹介会社の方が答えてくれました。

「まず、海外畑を歩んで来た人が日本に戻ることを希望した時、海外に拠点を持つ企業の日本本社での勤務を希望します。しかし、このような会社は既にある程度の人材を抱えていますし、企業皮は35歳を過ぎた段階での求人ですとある程度のポジションと待遇を用意する必要があります。そのため求人自体があまり多くないのが現状です。」

「さらに、同じように家族の都合や志向するライフスタイルの変化により日本に戻りたい海外経験者は多数おり、人材側の供給過多になっているようです。外資系企業の中にはそのような人材を求めるケースがありますが、多くの人数の受け皿になるほどの求人はありません。」

このような状況の中、家族は日本に滞在し、本人は海外を渡り歩くケースも多いそうです。このような場合、待遇面で圧倒的に恵まれている海外駐在員として雇用されることを望むことも多いのですが、それも厳しいようです。

→「海外就職における海外駐在員VS現地採用スタッフの仁義なき戦い」へ

「海外に拠点を持つ大手企業は自社内の若手を募って海外に行かせようとするため、外部から駐在員を募集するケースはあまり多くありません。またそもそも開発や製造分野に限るとコスト削減を目的に海外に出ているケースも多く、人材を採るのにわざわざコストがかかる駐在員として採用するメリットはないでしょう。」

たしかにその通りだと思います。最近は現地採用でも良い人材が取れる様な土壌もできてきましたので、2〜3倍コストがかかる駐在員の募集は少ないのでしょう。それではこのような状況に今後変化はあるのでしょうか?また個人としてどのように対処すれば良いのでしょうか?

3.日本に受け皿となる就職先が少ないのはたしか。。しかし今後は増えていくことが予想される。


それでは「海外で働くべきでないか」というとそうではありません。今後海外での日本人の求人は増えていくでしょうし、ますます活躍の場は広がっていくことが考えられます。日本企業も大企業に限らず中小企業も国外に出て行かざるを得ない状況になってきています。その流れは今後ますます加速してくことでしょう。また、日本では有力な就職先が見つからない若手にとって、就職のチャンスはまだまだあります。今後伸びゆくアジアでの就職は中長期的には非常に有力な選択肢になり得ます。

4.駐在、現地採用という言葉はなくなっていく。

シンガポールの転職エージェントの方とお話をする中で「駐在、現地採用という言葉がなくなっていく。」という話がでました。本当にその通りだと思います。今後日本の企業はどんどん海外に出ていかなくては生き残れない状況になってきます。そんな状況の中、グローバル化した企業において採用された場所によって待遇が大幅に異なるというのは馬鹿げています。また世界のグローバル企業では統一した尺度によって報酬が決まる流れになりつつあります。既にグローバル化された日本もそのような人事制度に移行しつつありますし、他の企業も徐々にそのような流れになっていくでしょう。

5.常に大きな視点で自分のキャリアの方向性について考える。


また常に大きな視点で自身のキャリアの方向性について考えていくことが大切だと思います。人によっては海外で働くこと自体が目的になってしまっています。しかし、多くの海外転職を果たした人にお会いしてお話を伺う中で「この人はこの国を選ばない方が良かったのでは?」と思う人や「このタイミングで海外に出るべきではなかったのでは?」と思われる人もいました。ここで大切な視点は、海外転職は目的ではなく、自分の夢や目標を叶えるための手段でしかないということです。海外就職のその先に漠然としても良いので大きな目標があれば、今の目の前の状況は全て成長の糧として捉えられると思います。下記のシンプルな表を眺めながら自分は5年後どこで活躍したいのか?と考えているととる選択肢も変わってくると思いますし、今現在の仕事の仕方も変わってくるはずです。

→「海外就職・転職を検討する前に必ずすべきキャリアの棚卸しと方向性の検討」へ

6.海外に出る際の心構え

海外就職はゴールではなくてスタートに過ぎません。その後のキャリアや方向性を考えずに飛び込むのは危険過ぎます。海外であなたのキャリアが行き止まりだった場合、やり直すのにとても苦労するでしょう。まず絶対に成功するキャリアや確実なキャリアは存在しません。どこにいってもどんな人でも失敗するリスクはありますし苦労もします。将来有望で生温い環境なんてあり得ません。特に現地採用という道を選ぶのは楽な道ではないかもしれません。しかし、今後の世の中の流れを見ると、海外、特に伸びゆくアジアに自分の人生の札を置いておくのは将来のキャリアに投資する意味でとても良いと思います。
→「あなたが海外就職をすべき6つの理由」へ

海外に出る一番のメリットはチャンスが多いということだと思います。起業する者としてのチャンス、雇われる側としてのチャンスの両方があります。詳細はまた別の機会に書きたいと思いますが、起業する者としては①タイムマシン効果と②初期投資の問題を回避出来る点だと思います。要は事業主としてスタート出来るチャンスがもらえるということです。是非、あなたがこれから海外で働くことを志すのであれば大きな夢と目標を持って大局的に自身のキャリアを考えて欲しいと思います。決して転職エージェントの言うことを鵜呑みにすることはしないで下さい。

→「海外で働くための心構え」へ

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岡本 琢磨(Takuma Okamoto)

Beyond the Border(ビヨンドザボーダー株式会社)代表取締役 / 海外転職カウンセラー・コーチ / フィリピン・セブ英語留学クロスロード代表・公認会計士 / 1979年5月8日生まれ / 慶応義塾大学経済学部卒