マニラで語学学校を立ち上げた嶋村卓亮さんの楽しく働くコツとは?
「私(僕)はなぜ働くのだろう?」
「私(僕)にとって仕事って何だろう・・・」
仕事で嫌なことが続いたり、毎日がつまらないとき・・・ふとそんなことを考えるかもしれませんね。
日本か海外かを問わず、働く上で楽しさや喜びばかりではないのが現実。
そんなとき、立ち返れる原点や拠りどころを持っていた方がより楽しく働けると思いませんか?
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こんにちは!
BEYOND THE BORDER ライターのペクです!
今回は日本で8年間教育系ビジネスに携わった後、フィリピン・マニラで語学学校を創業した嶋村卓亮(しまむら たかあき)さんにお話を伺いました。
学生時代から日本の教育環境・学校社会に疑問を感じ、教育に関する新しいサービス・仕組みをつくりたいという思いをお持ちだった嶋村さん。
新卒で入社したベネッセコーポレーション(以下、本編では「ベネッセ」と記載)で高校生向けのオンライン英会話サービスをフィリピン・マニラで立ち上げる過程で、自らが面白いと感じられる教育サービスが具体的に描けたそうです。
以来、当然不安はありながらもマニラで起業し、「仕事=価値提供」という仕事観や信念の下、前向きに進み続けてこられました。
そんな嶋村さんのお姿から、「仕事観」や「人生観」といった「観」を持つ大切さがきっと伝わるはず。
海外就職・海外起業をご検討の方はもちろん、日々の仕事になんとなくモヤモヤしている方もぜひお読み下さい!
*本文中のお写真は嶋村さんご本人からいただきました。
目次
嶋村卓亮さんとは?
筑波大学卒業後、ベネッセコーポレーションへ就職し、8年間勤務。高校生向けの英語教材やオンライン英語サービスの新規開発に携わる。「面白く、質の高い教育を届ける」べく、退職後の2018年にフィリピン・マニラで語学学校StepForwardを松原祥太郎氏と共同創業。2019年には東京に株式会社PHLightを創業し、東京でフィリピンを感じられる場所を作り、英会話スクール・人財事業・編集プロダクション事業などを展開中。2020年3月、東京・恵比寿にフィリピン式英会話スクールを開校。
*プロフィールは会社HP並びに、当日お伺いしたお話を基に執筆。
── 嶋村さんは現在海外で起業をされておられますが、元々海外にご関心があったのでしょうか?
就職して海外旅行をするまで、海外との関わりは全くありませんでした。
海外はお金持ちの行くところで、自分とは一生無縁だと思っており、「海外で起業」なんて微塵も考えていませんでしたね(笑)。
ただ、「英語教育」については、ベネッセで仕事をする中で関心を深めていきました。
英語教育には、異なる文化的背景を持つ人たちから、「多面的視野」や「多様性」を養う側面があります。
また、コミュニケーションツールとしての英語という「言語スキル」を養うことに加え、自主性や自己肯定感も刺激されると思っています。
外国人とのコミュニケーションを通じて、お互いの価値観が伝わる達成感や「もっといろんなことを伝えてみたい」という意欲が芽生えるからです。
語学・精神面ともに、英語教育を通して学び手がグローバルになっていくという意味で、狭く画一的になりがちな日本の教育環境・学校社会にも一石を投じられると思いました。
── 英語教育への関心が起点なんですね!
留学サービスを手がけているのは、海外に身を置く意義も強く感じるようになったからです。
日本の常識が全く通用しない世界で、小さなチャレンジを繰り返していくのが海外生活。
その過程で、今までとは違う視点を得たり、小さな成功体験を積み重ねることで、自己肯定感も高まります。
一般的に日本人は自己肯定感が低いとされるので、海外との関わりを通して人々がポジティブマインドを持てるように寄与したいと思ったんです。
英語を話せるようになるには、まず「自信を持って」話すことが大切で、心のハードルを乗り越えることが重要なんですよね。
「教育」×「新しい価値を生み出す」を軸に就職!そこで見つけた理想のカタチ
学生時代から、教育環境や学校社会に疑問や違和感、生きづらさを感じていたという嶋村さん。
教育格差への関心や教育現場への問題意識から、大学では教育の歴史や教育社会学を専攻されました。
大学卒業後は文科省に入省し、教育システム自体を変えていくのか、前職のベネッセで民間から教育に影響を与えていくかで当初は迷ったそうです。
── 「官」か「民」のどちらからアプローチするかで迷った末、最終的に一般企業を選んだのはなぜですか?
民間でスピーディに新しい価値を生み出すほうが楽しそうだったからです。
両者の話を聞くうちに、「官」の場合はステークホルダー(利害関係者)や既得権益が非常に多く、業務も基盤を整えるところに重きが置かれていると感じました。
一方、「民」の場合は新しい事業やサービスを作っていくことができ、自分のやりたいことに近いと思ったんです。
── 「スピーディーに新しい風を吹かせたい」という強い思いが伝わります。当時のお仕事について教えて頂けますか?
高校生向けの英語教材の開発やオンライン英会話サービスの立ち上げに携わっていました。
その過程で、現在の事業を立ち上げたマニラにも訪れるようになりました。
多面的な視野を養うのに向いていると感じていた英語教育に携われていた上、仕事の中で新しいサービスを世に出す喜びを感じることも多々あり、大変充実していました。
もちろん大変なこともたくさんありましたが(笑)、仕事の基本的なスキルや貴重な人脈を得られたのは前職のおかげだと感じる部分が大きいですね。
── 携わりたい仕事でスキルや人脈を得られていて、とても充実した日々だったように思います。そこから起業に踏み切ったのはなぜですか?
理由は3つあります。
1. 「仕事=価値提供」という仕事観
「なぜ働くのか」という原点に立ち返ると、それは「新しい価値を生み出すこと」であり、何より「楽しいと思えること」でした。
起業して、心から価値を提供したいと思えるサービスをつくっていくことで、自分の仕事観を体現しつつ、楽しく働けそうだと感じました。
2. マニラでオンライン英会話サービスを立ち上げた経験
サービス提供前のデモを通して、勉強や学校がつまらないと感じている高校生たちが、楽しみながら取り組む姿を目にしました。
「あぁ、こんなサービスを提供したいんだよな」と思いました。
「未知の世界で多面的な視野を養うきっかけを作り、つまらないと思っていたものに楽しく取り組めるようになる」
ここをより尖らせて、メインとなる価値として様々なサービスで展開したいと感じるようになりました。
3. 経営のスキルを習得したいという思い
前職では充実した日々を過ごしていましたが、全体の方針に納得がいかないことも正直ありました。
もちろん、経営陣の目線から見た最適解が異なるのだろうと想像を巡らせることはできましたが・・・。
最終的に、新しい価値を生み出すには、経営の観点から物事を考える必要があると思いました。
ただ、ビジネススクールに通うだけでは、経営スキルは身につかないと実感しました。
だったら、一度自分の手で会社を経営してみようと思ったんです。
── どれも大変素晴らしい理由ですが、個人的に特に最後が素敵だと思いました。ただ不満を言い続けるのとは違い、すごく前向きな考え方ですよね!
自分は常に「どうすれば良くなるか」を考えています。
「仕事=価値提供」だと考えているので、それに反して、生産性のない時間にしてしまう不満を言い続けるようなことはまずないですね。
もちろん、お酒の席では愚痴を言うこともありますが(笑)。
── 挑戦したことがないことに挑戦する不安はなかったのでしょうか?
当然不安はありましたが、挑戦することにリスクはないと思いました。
まず、「フィリピンで起業し、会社を経営していた」という非常に希少な経験が得られます。
当然成功するのが理想で、そのために尽力していますが、万が一失敗しても、海外で起業した経験は自分の中に蓄積される訳です。
そう考えると、海外起業にリスクはなく、むしろ挑戦した方が人財としての価値が上がると感じました。
そうなればもう・・・怖いもの無しです(笑)。
理想の教育サービスをフィリピン・マニラから! 信じて頑張り続ける日々を支えた「仕事観」
ご自身の経験から、海外でキャリアを歩むことを不安視する方に対して、そうとは限らないと伝えたいという嶋村さん。
そんな嶋村さんはオンライン英会話サービスの立ち上げで訪れていた、フィリピン・マニラで英語教育ビジネスを立ち上げることに。
ここからは現在の事業やそこにかける思い、充実した日々について伺ってみました!
── 現在の事業について教えて頂けますか?
フィリピン・マニラでステップフォワードという語学学校を立ち上げ、運営しています。
日本人が英語を学ぶ際、フィリピン人講師から英語を学ぶことは非常に理想的です。
彼らにとって英語は第二言語であり、学び手として英語を学んだ経験を持っています。
その上、ホスピタリティも非常に高く、日本人が英語を話せない理由の一つとなっているメンタルブロックを上手に解きながら教えられるんです。
他にも、コアビジネスとなる語学学校事業と上手く組み合わせて、フィリピンと日本の架け橋となれるような事業をもっと展開できるよう模索中です。
昨年末には日本で株式会社PHLightを設立し、日本での英語教育事業も展開し始めました。
日本でフィリピンの方々が活躍できるような場所を作っていきたいですね。
── マニラで起業され、最近日本にも新しく会社を設立されたんですね! 語学学校といえばセブのイメージがありますが、事業の立ち上げに際してマニラを選んだのはなぜですか?
「人」と「街」という2つの理由があります。
「人」に関しては、フィリピン大学など、フィリピントップ10に入るような大学のほとんどがマニラにあります。
よって、特に対策もせずにTOEIC満点を取得するほどの優秀な人材を採用できたりする訳です。
一方、「街」に関してはマニラの街に身を置くことで、心を揺さぶられることがたくさんあると思ったんです。
活気があり、日本より進んでいるのではと思えるところがある一方、一部にまだ貧しい地域も残る・・・。
その環境こそが人々の視野を広げ、豊かな価値観を手に入れるきっかけになると思いました。
何より既にセブには多くの語学学校がありましたし・・・。
── 確かに・・・ビジネスの中心地であるマニラならではの良さがありそうですね。
まさにそうですね!
マニラの場合は社会人が多く、落ち着いた環境でしっかりと勉強したいという方や、社会人同士交流を深めたい方には非常に魅力的だと思います。
当校が位置するボニファシオ・グローバルシティ(BGC)近郊については治安も良く、利便性も高いですし・・・。
また、マニラに視察がてらご留学される起業家の方や、これから起業される方もお越しになっており、僕が知人の起業家の方とお繋ぎしたりもしています。
こちらは無料オプションのような感じですね(笑)。
── 現地の起業家の方をご紹介頂けるのはとてもありがたいことですよね! 現在のお仕事でのやりがいや楽しさを教えて頂けますか?
まず、僕の仕事観でもある「新しい価値を生み出す」ことを毎日実現できている日々にやりがいを感じています。
加えて、海外で仕事をする中で、新しい発見が連続する日々に面白みを感じています。
日本とは違い、フィリピンでは会社とも家族のような付き合いをするので、社員同士の懇親会・パーティーやスポーツ大会等のイベントも社内でたくさん行われます。
そのアットホームな雰囲気自体も楽しいですし、日本とは違う文化の中で、日々仕事に取り組めることがとても魅力的だと思っています。
── 逆に、これまで何か難しさや苦労はありましたか?
文化の違いには面白さもある反面、上手くいかない部分も当然あります(苦笑)。
日本とは納期の考え方やスケジュール感も違いますし、計画を立てることに苦手意識を持つ傾向もあります。
開校が3ヶ月遅れ、売上は上がらないのに家賃だけが差し引かれるという事態に焦ったこともありましたね。
その一方で、「明日まで」など差し迫った案件の場合、日本では見られないほどの爆発力を見せてくれたりもします。
当然最初はこの文化の違いに驚きましたが、長く一緒に仕事をする中でひとつずつ理解できるようになってきました。
最近は多少の遅れは見込んだ上で、ただ大きく構えていればいいと思えるようになりましたね(笑)。
── 文化の違いによる難しさはきっとありますよね。ただ、お話を伺っていると、嶋村さんは楽しみながら上手く乗り越えられたように思います。その他に何か難しさや苦労はありましたか?
マネジメントについても日本とは異なるので、注意が必要な部分がありますね。
日本は石垣型組織と言われ、例えば部長から課長を経由せずに、社員に対して仕事を与えることもありますし、課長は(たとえ不満でも)文句はあまり言いません。
一方、欧米は厳格なピラミッド型組織のため、役職を無視した動きは制限されます。
オーナーの僕から一般社員に対して直接指示を出すと、しばらくフィリピン人マネージャーから口を聞いてもらえなくなったことがありました(苦笑)。
あとは・・・マニラの認知度がまだ低く、認知度アップのための施策打ちに苦戦している部分があります。
マニラが危険というのは場所によっては事実ですが、過剰にそのイメージがはびこっているように感じます。
現に、日本人が多く訪れるパリやセブ島よりも、マニラのマカティの方が安全指数が高いという調査結果もあります。
偏った情報ではなく、正しく客観的な情報発信を心掛けていきたいですね。
── 日々大変なこともあると思いますが、前向きに頑張り続ける原動力のようなものはありますか?
結局は仕事観や人生観が根底にあると思います。
自分にとって仕事は「新しい価値を生み出すもの」です。
たとえ多少大変でも、「仕事を通して、自分が良いと思うものを届けることで価値を提供したい」というのが自分の人生観です。
加えて、人生の中で費やす時間が最も長いのが仕事です。
だからこそ、価値を生み出す過程で直面する、苦手なことや難しいことすらも楽しみたいと思っています。
── とても素敵な心構えですね。指針や心の支えとなる原点を持つのはすごく大切だと思います。
この考え方は“DEPS”という会社の標語にもなっています。
基本的にここから逸れなければ、何をしていても楽しいですよ!
- D(Diversity)::様々な考え方があっていい。広い視野と想像力を持つこと。
- E(Enjoyment):すべてを受け入れ、基本的に楽しまないと損。
- P(Professionalism):仕事はWork(作品)であり、価値提供。妥協しないプロ意識を持って取り組む。
- S(Sincerity):何事も誠実に。
改めて振り返ってみると、仕事観や人生観といった「観」を作ることがとても大事だと思います。
気になる今後と海外で働きたい方へのアドバイス
── 今日のお話を通して、立ち返る原点の大切さを身にしみて感じました。一方、「観」を見つけ出す難しさもあると思います。嶋村さんご自身はどのように作り上げてこられたのでしょうか?
仕事をする上で当然大変なこともたくさんあり、転職を考えた時期もありました。
その度に「なぜ今この仕事に取り組んでいるのか」や「自分は何がしたいのか」を節目のタイミングで振り返るようにしていました。
その際、自らの在りたい姿 “to be”から、自らが成し遂げたいこと“to do”を導くようにしていました。
特定の仕事で活躍したいと思ったとしても、それがベストか否かは分かりません。
ただ、自分が「何をしていると楽しいか」や「幸せを感じる瞬間」は分かりますよね。
自分が幸せを感じるポジションを見つけ出し、大切にしていければいいと思っています。
── ご自身の在りたい姿を追求し続ける姿、とても素敵です。そんな嶋村さんの今後についてお聞かせ頂けますか?
まずは学校の規模をもっと拡大したいと思っています。
その過程でマニラ留学の魅力をより多くの方にお届けし、認知度を上げていきたいですね。
同時に、今取り組んでいる新規事業の立ち上げなどを進め、新しい価値をどんどん生み出すことで、楽しい人生が送れる方を増やしていきたいと思っています。
また、昨年新しく東京に設立した会社を拠点に、もっと日本での英語教育にも関わっていけたらと考えています。
まずはフィリピン式英語学習のスクールをしっかり立ち上げたうえで、フィリピン人講師をALTとして学校に繋いだり、放課後の補習授業を受け持つなど・・・公教育でも関われる機会はあると思っているんです。
そこで子どもたちに新しい学びの機会を提供したり、外国の方とコミュニケーションをする楽しさを感じて欲しいですね。
僕は英語初学者や子どもにはフィリピン人講師が合うと思っており、その良さを少しでも広げていきたいと考えています。
一方で、今携わっていることだけに固執するつもりはありません。
アジア展開をするもよし、全く別の事業を立ち上げるもよし・・・。
自分の仕事観である「新しい価値を生み出す」から外れなければ、何をやってもきっと楽しいですし、可能性はいろいろあると思っています。
── 最後に、海外で働きたい方へのメッセージをお願いします!
海外で出会うものすべてが面白く新鮮で、きっと成長にも繋がると思っています。
その際、日本の常識や価値観で考えず、文化の違いを理解し、楽しみながら前に進む方がすぐに馴染めると思います。
また、海外での挑戦に不安を感じている方には、考えているほどのリスクはないかもしれないとお伝えしたいです。
なぜなら、基本的に人材としての価値が上がれば転職は可能だと考えています。
海外で仕事に活きるスキルや幅広い視野を身につければ、万が一失敗しても、活躍の場は他にいくらでもあると思うんです。
ただ、海外で働くのは決して楽ではありません。
「楽そう」や「楽しそう」という理由だけで安易に飛び出すと、辛い思いをすると思います。
── これから海外に出る方にとって、とても参考になるアドバイスだと思います。
いえいえ、とんでもないです(笑)。
もし私から提案させてもらうとしたら…海外生活には向き不向きもあると思うので、まずは2~3週間留学をしてみてはいかがでしょうか?
当校へご留学頂ければ、フィリピン人の方やマニラでご活躍される起業家の方をご紹介することも可能です!(宣伝です!笑)
現地でいろんな話を聞いてみてから考えるのもひとつだと思っています。
弊社の社名“StepForward”は「一歩踏み出す、その先へ」という意味もあります。
海外で挑戦するにあたって、最初の一歩として是非ご検討頂ければと思います!
まとめ
いかがでしたか?
「新しい価値を生み出す」
そのブレない仕事観の下、キャリアを歩み続けてきた嶋村さんの姿がとても素敵でした。
仕事観・人生観という拠り所があったからこそ、嶋村さんは常に前向きに頑張り続けられたのだと感じました。
今回のお話を機に、ぜひ一度ご自身の仕事観や人生観について考えてみてはいかがでしょうか?
最後を宣伝に繋げられたのもお見事(笑)!
本当に嶋村さんのおっしゃる通りで、関心があるのに何も動き出せないなら、いきなり飛び込まず、まずは留学で現地の様子を知るのもひとつだと思います。
安易に飛び出さず、現地を訪れた上で本当にご自身にとってベストな選択肢なのかを考えてみる必要がありますよね。
嶋村さん、この度は貴重なお話をお聞かせ頂きまして本当にありがとうございました!
貴社の益々のご発展、並びに嶋村さんの益々のご活躍を心より祈念しております。