アジア起業家

コワーキングスペース事業"The Company"を世界で展開する勝呂方紀氏に尋ねる『海外で起業するための秘訣とは』

こんにちは!
BEYOND THE BORDERライターのペクです。

「海外で働く」なんて難しそう、ましてや「海外で起業」なんて・・・
そう思われる方も多いと思います。
では、実際に海外で起業をされている方はどんな想いで日々仕事と向き合っているのでしょうか?

今回は日本・世界各国で展開されているコワーキングスペース"The Company"をセブで運営されている、ZeroTen Philippines Inc. CEOの勝呂方紀さんにお話を伺ってみました。

 

勝呂方紀さんとは?

The Companyをセブで展開する 勝呂方紀氏

勝呂方紀さん プロフィール
新卒から13年間日本でNTT DATA、リクルートにて営業・マネージャーとして活躍。その後2015年から2年間奥様と共に世界一周の旅へ、60カ国を歴訪。世界一周中に得たいくつかの気づきを機に2017年にセブ留学、その後セブで起業し、コワーキングスペースを運営。2017年12月にセブで1店舗目をMandaueに、2019年2月に2店舗目をIT Parkにオープン。今後も各国への店舗展開を目指して日々奮闘中。

 

なぜ世界一周の旅に出ようと思ったのですか?

 

常に目標を掲げて突き進んできた20代

「トップ営業マンになる」「新規事業を立ち上げられる人材になる」「マネージメントができる人材になる」など、20代はとにかく常に目標を掲げ、突き進んできました。
学生時代とは異なり、社会に出ると幅広い年齢層の方々とお付き合いをする中で、自分自身の経験や知識の至らなさを絶えず痛感していたからです。
20代は様々な出会いの中で、自分にとって「足りないもの」を自覚し、自ら徹底的に学び、習得する・・・といった期間でした。

 

「自分の価値」「自分の果たすべき使命」について考えてきた30代

20代で自らが「足りない」と感じていたものは主にはビジネススキルでした。
ビジネススキルを磨こうと勉強を始めても、最終的には社会学や心理学といった学術的な部分に通ずる気がしたんです。

「社会に対して何か言える知識がない自分で本当に価値を残せるのだろうか?」
「自分が本当の意味で社会に対して果たすべき使命って何なのだろう?」

30代を迎えたとき、そんな疑問が頭をよぎるようになりました。
加えて、自分の中での知識不足を痛感する出来事がいくつかあったのを機に、まとまった勉強の時間が欲しくなり、世界一周の旅へ出ることにしました。

 

お話の中で、若い頃から「学ぶ」と「働く」を両立させながら歳を取っていく方が健全だし、楽しいと仰っていた勝呂さん。
世界一周の旅の後も、セブ留学→セブで起業、と絶えず「新しさ」を求めて挑戦を続け、現在に至ります。

 

きっかけは偶然、疑似的な「場」を通した「仲間」の力で新しい価値を

勝呂さんの現在の事業について詳しくお聞かせ頂けますか?

 

フィリピン・セブ島で"The Company"というコワーキングスペースを運営しています。
運営会社である株式会社Zero-Tenは元々プロジェクションマッピングやイベント運営企画、空間演出など幅広い分野での総合的なプロデュースを担っている会社です。
イベントでも、空間演出でもそうですが、「新しいものを生み出す」際にはワークフローが明確に定まっておらず、メンバーが一緒になって考える時間が必要です。
「一緒になって考える場所を作りたい」という想いで、コワーキングスペースの運営を始め、この場所をひとつの疑似的な「会社(company)」とし、メンバーである「仲間(company)」同士が繋がり、支え合いながらひとつの「もの」を作っていけるような空間を提供しています。

 

なぜセブでコワーキングスペース事業を始めようとされたんですか?

 

きっかけは偶然に

元々、世界一周後にセブで語学学校へ通っていたのですが、留学期間中に日本で働いていた頃の友人から「セブでコワーキングスペースの事業を一緒にしないか?」と誘われたことがきっかけとなりました。
私自身もちょうど世界一周の旅を通して得られる知識や情報の質や量が以前とは変わり、視野が広がったことから、「もう少し海外で身を置いていたい」、「世界で戦える術をなんとかして身に着けたい」という想いを抱いていたので、その誘いに乗ったという感じですね。
正直なところ、コワーキングスペース事業自体に強い拘りがあった訳ではありません。

また、友人にとっても僕にとっても場所がセブである必然性はありませんでした。
ただ、日本人が海外で起業するにあたってぶち当たる壁として

  1. 言語
  2. 現地独自のルール
  3. ビジネスパートナー

が挙げられます。
海外で「信頼できるビジネスパートナーを探す」のは大変なことで、たまたま友人にとって信頼できるパートナーである私がセブで語学留学をしていたので、セブを選んだという形です。
「どこの国で」よりも「誰と一緒に」が友人にとっては大切だったのだと思います。

 

コワーキングスペースの広がる可能性

事業内容に拘りがなかったとはいえ、ビジネスをする以上、今後伸びる業界に身を置かないと意味がないですよね?
その点、コワーキングスペースは中長期的にも大きな可能性を秘めていると考えています。

テクノロジーの進化により、ビジネスの成否という結果が出るのもどんどん速くなっています。
そんな中、これから新しく事業を始める起業家にとって、これまでの長期賃貸契約ではなく、より短期で、自由で、変更可能な契約で使用できるコワーキングスペースはメリットが大きいと考えています。
実際、「世界中のオフィスの3割がコワーキングスペースになるのでは?」という話が出ていたり、日本でも多くのディベロッパーがコワーキングスペースの運営を始めています。

世の中で今後ますます需要が高まり、伸びる可能性を感じられるコワーキングスペースのビジネス。
今後ますます伸びていく国で、そのビジネスに携われることにワクワクしたという気持ちはあります。

 

そこに「日本だから」「海外だから」なんてない


日本でも新規事業立ち上げをご経験されている勝呂さん。
実際海外で起業をしてみて、日本で事業を立ち上げるときと「違い」はあったのでしょうか?

 

海外で起業したからこそ感じた面白みや醍醐味はありますか?

 

仕事のやりがいや面白みはどこに行ってもあります。
そこに「日本だから」「海外だから」という区分けは僕にとってはありません。
ただ、既に日本で13年ビジネスをしてきた僕にとって、「海外でビジネスをする」という自分にとって新しいことに挑戦できていることに日々喜びを感じています。

僕自身もですが、多くの人にとって「成長」が生きる喜びになると感じていて。
その「成長」を促すのが、「新しい知識を得ること」だと考えています。
日本にいると、あらゆる物事が既定路線の中で予測可能ですが、海外にいると想定外のことが起きたり、新しい考え方に出会ったりしますよね?
それが僕にとって「成長」をもたらしてくれていて、楽しいんだと思います。
「もっと成長したい」という強い想いが英語を勉強してアクセスできる情報量をもっと増やそうと、セブに語学留学をするきっかけにもなりましたし、今でも「もっと英語のスキルを上げて海外での経験値を積みたい」という想いに繋がっていると思っています。

 

逆に、海外で起業したからこその難しさはありますか?

 

事業を始めるに当たっては事前にリスクをきちんと洗い出すことが重要です。
事前に想定しきれておらず失敗したら、そこに自分で気づき修正を掛けていく・・・
この部分は日本国内、海外を問わず必要な部分と思っています。

しかしながら、海外にはその国独自の宗教や文化・慣習があるため、自分にとっての経験値が少なく、知らないことが多い分、リスクの洗い出しが難しいということはありましたよね。
事前に知っていればお金を掛けなかったであろう部分に、リスクを洗い出し切れずにお金を掛けてしまったり・・・

 

文化や慣習の違う方々と働く難しさを挙げる方が多いと思うのですが、その点いかがですか?

 

そこについては、予めビジネスを組み立てる中で予見しきれなかった「自分の責任」だと考えています。
一緒に働く中で、「日本人だから」「フィリピン人(あるいは●●人)だから」と固定観念的に捉え、向き合ってしまうのは相手に対して失礼だと思いませんか?
「人種・国籍・性別を問わずフラットに見て、対等に接する」ことを意識して日々向き合っています。
マネジメントをする際、着目すべきところは「個」の違い・「キャラクター」の違いであり、その人それぞれに対してマネジメントする側が上手く調整していく必要があると考えています。

ただ、ひとつ苦戦しているところがあるとすれば、「ナイスなジョークや気の利いたことがなかなか英語で言えない」ことですかね(笑)?

 

英語でのナイスなジョーク!?例えばどんな場面で必要だと感じますか?

 

もちろんスタッフとの日々の関係構築でもそうなのですが・・・
特に仕事の指示を出す際に、お願いをする相手に対して「この基準を満たして欲しい」といった一定の期待値があると思います。
それを細かく、本人の工夫の余地がないほどにタスク化してしまうと、明確ではあるけれども面白くないですよね?
よって、依頼する側としては、そのタスクの中で少しでも各自のオリジナリティを出せるように依頼をする訳です。
どうすれば相手がありありとゴールが描けるような指示を英語で出せるのかな、と日々試行錯誤しているところです。

 

まだ誰も見たことのない世界を見たい


どんなときも原因を自己に求める厳しさを持ちながら、「成長」を求めて突き進む勝呂さん。
今後についてはどのようにお考えなのでしょうか?

ご自身の今後については、「天気のよいところに住む」と冗談交じりにお話しされつつ、

「まだ誰も見たことのない世界を見たい」

という知的好奇心が日々の原動力であり、その好奇心のままに歩を進めているとのこと。
ここでは、今後の事業の展望について伺ってみました。

 

今後の事業の展望をお聞かせ頂けますか?

 

自身の経験を次の「誰か」へ

自身の海外での起業経験をもとに、日系企業がどんどん海外に進出できるようサポートしたいと考えています。
大手企業であれば、資金力・労働力ともに海外進出をするうえでさほど問題はないとしても、中小企業やベンチャー企業の場合、日々の業務の中で、海外進出のためにさらに人や資本を捻出するのは非常に厳しい状態です。
現地と日本のルールの違い、ビジネスパートナー探し、リスクの洗い出し・・・
「自分が経験してきたことを次の誰かに伝えていきたい」と思っていますし、それがコワーキングスペースという「場」の中で、付加価値として発揮できれば、多くの人にとって価値あるものになると考えています。

 

世界中のメンバーと新しい価値を生み出したい

先程もお話した通り、運営会社の株式会社Zero-Tenは元々制作会社です。
コワーキングスペースには日々新規ビジネスを始める方をはじめ、様々な方が集まるため、新しいタレント(才能)のプールになると考えています。
各国に今後コワーキングスペースを新規出店・展開していくことで、世界中の多様な才能を集め、新しいサービスやイベントをメンバーと一緒に生み出していきたいと考えています。

 

まとめ

いかがでしたか?

これから益々世界各国へ展開を進める"The Company"と常に挑戦を続ける勝呂方紀さん。
いずれも今後目が離せませんよね。

個人的には、「人種・国籍・性別を問わずフラットに見て、対等に接する」マネジメントのお話が特に印象に残りました。
これから海外で働く方には是非参考にして頂ければと存じます。

勝呂さん、この度は貴重なお話をお聞かせ頂きまして、誠にありがとうございました。

 

The Company Cebu IT Parkのご紹介

今回取材させて頂いた勝呂さんが運営される、The Company Cebu IT Parkのご紹介です。
The Company IT Park 受付

The Company Cebu IT Parkはセブの経済を牽引する先進的なエリアであるIT Parkに位置する、セブ最大のコワーキングスペースです。
少し明るめの茶色を基調とした落ち着いた空間でありつつ、アートを取り入れたオシャレな空間となっています。
コミュニティマネージャーのJoyはフィリピン政府 DICT(Department of Information and Communication Technology)が定めるStartup championの一人に選出されており、スタートアップ企業を支援していく「Startup Island」というDICT認定プログラムの実施が決まっているなど、今後も積極的にフィリピンのスタートアップコミュニティに貢献していくとのことです。
参考:The Company HP

The Company IT Park 店舗情報

住所: 15th Floor, HM Tower, Cebu I.T. Park, Corner of W. Geonzon Street, Cebu City, Cebu, 6000

電話番号:032-384-2040
メールアドレス: thecompanycebu@gmail.com

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Jiyoung Baek

セブ留学がきっかけで東南アジアの虜に!! フィリピン・セブでの海外インターンを経て、ベトナム・ハノイで海外就職。約2年に渡って大好きな東南アジアで働きながら、旅をする生活をしていました。 現在は自身の海外経験を基に、旅するインタビュアーとして海外で活躍する方々を取材し、「海外で働くとは」について発信することで、海外で働きたいけど一歩踏み出せない方に挑戦のきっかけを作るべく奮闘中。 どんなときもアジアの眩しい陽射しのような笑顔を忘れず、頑張っています! 日々大事にしていること「やらない後悔よりやって後悔、何でもやってみる!」