「可能性を信じて挑戦すること」インドのヘルスケア業界に挑む20代起業家のマインドセットとは

人口13億人、経済力では世界7位を誇るインドですが、2027年には日本を抜き、世界第3位の経済力に成長することが見込まれています。

そんな成長著しいインドのデリー郊外のグルガオンで活躍する若き起業家の足立翔一郎さんに、ご自身が手がける事業内容と今後のインドビジネスの可能性について語っていただきました。

足立翔一郎さんとはどんな人なの?

 

インド・グルガオンの起業家。29歳(2018年5月インタビュー時)。

鳥取県出身。キーエンスのグループ会社で新規事業の立上げに従事。B2Bマーケティング、営業オペレーション構築、用途開発などを経験。海外視察を経て、インドの可能性に魅了され、インドでの起業を決意。2017年4月よりインドへ渡航し、Blucycles Private Limitedを創業。

インドで2億人以上の肥満・6千万人を超える糖尿病患者に向けて、低糖質食デリバリーサービスを立ち上げる。「食事をリプレイスするだけで痩せられる」というコンセプトが多忙なビジネスパーソン、激しい運動のできない産後の主婦や高齢者などから広く受け入れられている。今後は、他都市展開も視野に入れて、インドNo.1のダイエットサービスになることを目指している。

どのような経緯で今のビジネスをインドで始めたのか?

インド人の富裕層が住むマンション群
そもそも足立さんは日本で何をやってきてどうしてインドで起業しようと思ったのですか?

大学時代にNPOで活動していた経験から、将来は自分で起業してビジネスを通して社会に大きな影響を与えることにチャレンジしたいという思いがありました。高収益で高付加価値を生み出すキーエンスグループでビジネスの基本を勉強したいという想いで、グループ会社のベンチャーに入社し、新規事業の立ち上げで、B2Bマーケティング、営業オペレーション構築や用途開発などに6年間ほど従事しました。

在職中、海外ビジネス視察をする中で、人口13億人を超えて経済発展の真っ只中であるインドの可能性に魅了され、ここでチャレンジしたいという気持ちが芽生えました。そこから2年間ほど会社で働きながら、長期休暇を利用してビジネス視察を繰り返して準備を進めていきました。

なるほど。でもいきなりインドで起業って大変だったのではないでしょうか?

そうですね。実は、現状のビジネスモデル(低糖質食デリバリーのダイエットプログラム)に行き着くまでに二転三転しました・・・。日本人では想像できない慣習が数多くあり、仮説が根底から覆されることが何度もあったんです。

具体的にはどういうことでしょうか?

インドに来たのは昨年(2017年)の4月なのですが、最初はアパートメント設置型の自転車シェアリングサービス事業を手がけるつもりでいました。具体的には、インドでは都市部などで1000世帯を超える巨大なアパート群があります。インドでは、こうした住居エリアと商業エリア(モールやマーケット)などが明確に区分されており、そこに短距離移動ニーズがあると考えたんです。そのエリア内にドッグを設置し、住人に使用してもらうということを考えて、アパートメントへの営業からスタートしました。

営業を始めて間もなく理解するのですが、インドのアパートメントは基本的に分譲マンションであり、そこに住む人たちは高所得だったんです。彼らは、移動手段としては車やバイクを当たり前にもっているので、そもそも移動手段として自転車を利用するニーズがないということが分かりました・・・(笑)

日本に住んでいると、アパートメント=賃貸のイメージが先行して潜入観があったのですが、その根底から間違っていました。

なるほど(笑)。それでどうされたのですか?

インドに到着して1週間ほどで、この事業を断念することを決めました。

速攻で挫折したんですね(笑)。それでその後どうされたのでしょうか?

ただ、インド人取締役の原付に乗って泥臭くマンションを1件1件回り、マンションの組合の人や高所得層である住人から非常に多くの話を聞くことができて、そこから新しいビジネスの種が見つかったんです。

話を聞く中で、予想以上にフィットネスのニーズがあることが分かりました。移動手段の自転車には興味ないけど、ダイエットのために自転車に乗ることや、家で運動できるエクササイズバイクに対して大きな関心を持っていることに気付きました。

そのことが分かり、今度はフィットネスバイクのレンタルから始まり、パーソナルトレーナーの自宅派遣、ダイエットコーチングなどを色々事業として試してみたんです。

すごい行動力ですね。

ただ、どれも上手くいきませんでした…(笑)

なぜ、上手くいかなかったかというと、インド人の本質やその歴史的背景が見えていなかったんです。パーソナルトレーナーの自宅派遣サービスについては、トレーナーを雇ってモニターにサービス提供を行った時の感想が、「人生で初めて運動しました」という一言でした・・・。現状の20代以上の世代は、当時体育の授業がなく、人生で100mすらも走ったことがないという人がほとんどであることが分かりました。そう考えたときに、パーソナルトレーニングのようなサービスが主流になるのにはもうしばらく時間がかかりそうだと感じました。

また、ダイエットコーチングについても、管理栄養士と提携し、顧客に毎日の食事を報告してもらい、それに対してアドバイスを行うというサービスだったのですが、モニターのほとんどが開始3日くらい経ったあたりから送ってこなくなりました…(笑)

これは、インドにはカースト制度があり、高所得層の方は身の周りのことはメイドにさせ、料理はシェフがつくり、運転はドライバーがするというのが一般的です。その意味で、人に何かをさせるというのがスタンダードな中で、自分が頑張って何かをするというのは難しいのだと実感しました。

足立さんにとってインドで起業するってどういうこと?

インドでの移動手段の一つのオートリキシャ。グルガオンでも走っています。
インドでの事業開始当初は本当に苦労されたんですね。

そうですね。仮説と検証の連続で、そのサイクルを回す中で新しいビジネスの種が見つかって、テストマーケティングする中で玉砕するという繰り返しが半年間ほど続きました。

ただ、その延長で、「食べるだけで痩せる」という努力せずに痩せることができるコンセプトに行き着くことができ、インド人に受け入れられるサービスを創ることができました。

なるほど。現在の事業について教えて頂けますか?

インドで2億人以上の肥満・6千万人を超える糖尿病患者に向けて、サブスクリプション型の低糖質食デリバリーサービスを提供しています。具体的には、低糖質化したランチとディナーを毎日デリバリーし、いつもの食事をリプレイスするだけで自動的に痩せることができるというダイエットサービスを提供しています。このコンセプトが多忙なビジネスパーソン・医者、激しい運動のできない産後の主婦や高齢者などから受け入れられています。

インド人の食習慣に合わせて低糖質チャパティ・ピザなどを開発している
足立さんにとってインドで起業するとはどういうことなのでしょうか?

起業を通して、可能性を信じて挑戦すれば成功できるということを体現したいを考えています。将来は、その経験を通して多くの人が挑戦する勇気づけをしていきたいです。

そして、今はインドのヘルスケア業界に大きな可能性を感じています。

これまで何度も心が折れそうになる瞬間はあったのですが、可能性を信じて挑戦すること自体がインドで起業する本来の意味だったので、前に進み続けることができました。

 

インド人のマネジメントって大変?

現在の事業はどのような体制でされているのですか?

現在の体制は従業員が17名で全員がインド人です。オペレーションマネジメントスタッフが2名。セールススタッフが2名。シェフが4名。デリバリーライダーが9名です。

インドの方をマネジメントをする際にご苦労はないですか?

弊社はまだスタートアップ期なので、仕事の選り好みをせず、自分が会社の未来を創っているという意識でハードワークをしてもらいたいのですが、インド人はキャリア形成の意識が高く、そのような人材はなかなか採用できません。そのため、MBAホルダーや、バイオテックの修士卒など、ビジネスやヘルスケアの素養が高く、スタートアップで働きたいという情熱のある新卒を雇って、事業の成長に合わせて一緒に成長していける人材を雇うことが一つの選択肢になっています。その意味で、基本的なことについては教育していく必要はあるものの、一緒に成長していくというマネジメントを意識しています。

マネジメントにも心を砕いているのですね。当初から英語は堪能だったのでしょうか?

全く得意ではありませんでした。恥ずかしながら、インドに来る直前の去年2月の時点でTOEIC500点くらいでした・・・(笑)

学生時代に1ヶ月だけアメリカに短期留学をしたり、インドに渡るまでの1年間は英会話のマンツーマンレッスンに通ったりしたものの、元々理系で英語は苦手で・・・。

ただ、この1年間はほとんど英語しかコミュニケーションがとれないので、今ではビジネスの現場で英語に困ることはほとんどなくなりました。

今後のインドビジネスの可能性、そしてその先の展望は?

グルガオンには鉄道(モノレール)も通っています
今後でのインドでのビジネスの展望を教えてください。

まずはデリー都市圏2,000万人でサービスを提供し、デリーでNo.1のダイエットサービスに育てていきたいと考えています。それから各インドの都市に横展開をし、インドNo.1のダイエットブランドにしていくことが目標です。また、今は、B to C(会社から一般消費者へ)のビジネスモデルですが、ゆくゆくは病院と提携し、糖尿病患者など肥満に起因する患者向けにもサービスを展開していきたいです。

なるほど。今後も楽しみなビジネスですね。

今年の3月には、設備投資を行いセントラルキッチンを整えましたが、今後他都市などへの横展開を考えた場合はさらに資本が必要になります。現時点では自己資本で進めてきましたが、今後は外部の資本も入れてビジネスを加速させていくことも考えています。

すごいですね。さらに次のチャレンジも考えているのですか?

可能性という意味では、次はアフリカ市場にもチャレンジしてみたいですね。そして最後は宇宙かな・・・(笑)。僕にとって、自分が可能性を感じてわくわくすることにチャレンジすることがど真ん中の生き方なんです。今は何でもできる気がしています。

まとめ

ここまで29歳の足立翔一郎さんという起業家のチャレンジについて読んでいただいて、皆さんはどのように考えられたでしょうか?人によっては「自分にはここまではできない。」と考えられるかもしれませんし、「可能性にチャレンジする姿にワクワクする」と感じられる方もいらっしゃるかもしれません。僕もインドに来て爆発的に発展する社会を見て、そしてここでチャレンジする若き起業家をみて、心が踊りました。

もし、自分も同じように挑戦したい!と思うのであれば、彼のようにいきなり起業をするのも良いかもしれません。でも、さすがにそれは難易度が高いと思います。僕もイキナリ海外で起業(フィリピン)組ですが、やはり苦労をしましたし、リスクも高いです。そのため、まずは海外就職をしてみるのも良いかもしれません。

伸びゆくアジアで足立さんのようにチャレンジする若者が次々に誕生するときっと世の中はもっと面白くなると思いました。

MinoriNishimura