コラム

海外就職するならどっち?海外駐在と現地採用の実情とキャリアの行方

こんにちは!海外キャリアコンサルタントの岡本(@tokamoto1979)です。

海外就職して企業で働く場合、基本的には「海外駐在」「現地採用」という2つの選択肢があります。

海外就職の相談をしていて、時々「海外駐在」として働くべきで、「現地採用」で働くべきではないという意見を聞くこともあります。

果たして本当でしょうか?

数多くの海外就職のサポートをしてきたキャリアコンサルタントである私の結論をいうと、「あなたが現在の職場で海外転勤のチャンスがすぐにはない場合、まずは「現地採用」という形態で海外で働くことを検討した方が良い」ということです。

今回の記事では、まずは「海外駐在」と「現地採用」について解説した上で、それぞれのメリット・デメリットを理解していただきます。

そして、なぜ私がまず「現地採用」をオススメすべきかの理由について解説します。最後に「現地採用」をした場合のその後のキャリアの選択肢について検討していきましょう。

1.海外駐在とは?現地採用とは?その特徴を理解する

海外で働くことを考えた時、基本的には「海外駐在」と「現地採用」という2つの方法が考えられます。それぞれの定義は以下になります。

①海外駐在員

…日本企業や外資系企業の日本法人に雇用されて、会社命令で海外拠点に赴任している人。

②現地採用のスタッフ

…現地採用とは、現地の日系企業や外資系企業、現地企業などに直接雇用されている人。

「海外駐在員」と「現地採用」はどちらも海外で会社員として働くという意味では同じですが、給与や待遇、自由度の面などで両者は大きく異なります。それぞれの特徴について具体的に見ていきましょう。

特徴① 雇用主

海外駐在は日本国内で雇用され、海外へ派遣されるため、たとえ働いている場所は海外であっても雇用主は日本の国内企業になります。一方現地採用は、求職者は現地の企業に直接雇用されることになるため、現地の企業が日系どうかは関係なく、雇用主はその国の企業になります。この雇用主が日本側になるか現地側になるかによって、給料などの待遇や自由度、仕事内容などは大きく異なってきます。

特徴② 給与及び待遇面

まず一番最初に気になるのは給与や待遇面の相違だと思います。これについては圧倒的に「海外駐在員」が有利です。「現地採用」の給与が20万円だったとしても、「駐在員」は日本での給与に加えて海外赴任手当、さらには高級コンドミニアムを会社経費で賃貸してもらえるケースも多いです。さらには日本の社会保険及び雇用保険などの間接的なものを考慮すると「現地採用」の2倍〜3倍程度の報酬の違いが出てくる場合もあります。

特徴③ 自由度

一方で、海外で働くまでの難易度と自由度を考えると圧倒的に有利なのは「現地採用」になります。「駐在員」は通常、日本で採用され数年から10数年間もの期間、同じ会社で働き、日本での実績を評価されたり、自ら手を挙げた社員の中から、会社の方針に従って決められた国に「駐在員」として赴任されることになります。そのため、通常は国を選ぶこともできませんし、タイミングも自分で決めることはできません。しかも希望すれば選抜されるというものでもないため、「駐在員」として海外に赴任するのは一般的に難易度が高く、自由度は低いです。

一方、「現地採用」は現地の企業に直接雇用されることになります。就職・転職活動も現地企業と直接行います。そのため自分で働く国や都市、そのタイミングを決めることができます。また、企業としても企業側の意向で現地に赴任し、なおかつコストがかかる「駐在員」よりも、現地で働くことを前提にして就職を希望してコストも数分の1で済む「現地採用」の方が採用しやいのが現状です。よって「現地採用」は自分で国や就職先を選べる点、海外で働くチャンスを得る面で難易度が低く、自由度が高いと言えます。

特徴④ 仕事内容

仕事内容についても「海外駐在員」と「現地採用」では異なります。「海外駐在員」が日本側からわざわざ高い給料をもらって派遣されてきたことを考えると、ほとんどの場合、仕事内容は現地業務のマネジメントや新規事業開発もしくは研究開発などの特殊な技能が必要となる非常に責任の重い仕事になります。

一方「現地採用」は直接現地企業に雇われることになります。もちろん、わざわざ現地の人よりも賃金が高い日本人を雇うわけですので、日本人でなくてはできない仕事を行うことになります。具体的には現地の他の日系企業や現地在住の日本人の顧客への営業などの日本語によるオペレーションや現地のスタッフと日本本社もしくは現地駐在員との橋渡し役などの業務が多くなります。

特徴⑤ 将来性

「駐在員」と「現地採用」でどちらが将来性があるかという点については、ケースバイケースになります。ただ仮に、あなたがある特定の企業に雇われ続けることを望むのならば「駐在員」の方が良いでしょう。「駐在員」は現地スタッフや「現地採用」の日本人をマネジメントする立場で日本から赴任しています。2年から5年で日本に戻りそこでキャリアを積む場合も多いですし、現地で業績を上げれば日本側に上位のポストを用意してくれる場合もあるでしょう。あくまであなたの人事は日本国内の本社が管理しています。

一方で「現地採用」は「現地企業」に直接雇われることになります。そのため、あなたがどんなに現地で活躍したとしても、あくまでその「現地企業内」で評価されるのみで、日本の本社内で評価されるわけではありません。

したがって日本本社で登用されたり、日本国内にポストを用意されるという可能性は若干はあるものの、あまり高いとは言えません。また、ある程度の規模で日本から定期的にマネジメント層が出向する会社の場合、彼らより上のポジションに行けることもまずないでしょう。

そのため「現地採用」の多くは現在の企業に勤め上げるというマインドを持っている人は少なく、より有利な条件での転職や独立起業を考える人が多いです。

2.海外就職を目指すなら「海外駐在」か「現地採用」ではどちらを選ぶ?

結論としては、あなたが海外で働くことを希望していて、現在の職場で海外転勤のチャンスがある場合は、「海外駐在員」を希望するのが良いでしょう。一方、そのようなチャンスが今の社内になかったり、他の企業への就職や転職を伴ったり、自分の望む国や都市で仕事をしたいのであれば「現地採用」として海外で働くことを選ぶのが一般的だと思います。

理由は、「海外駐在」と「現地採用」の違いで述べた「③自由度」において「現地採用」に軍配が上がるからです。現在の職場に海外転勤のチャンスがなく、英語力や特別なスキルがない場合、転職をしてすぐに「海外駐在」はかなり難しいでしょう。

ただ、既にかなりの英語力があり、さらに特定分野において秀でたスキルがある場合は、現地採用ではなく、海外駐在待遇で海外就職をする可能性もゼロではありません。そのため、一度、海外就職に強みのある転職エージェントに相談してみると良いでしょう。

3.海外就職をして現地採用スタッフとして働くための心構え

「現地採用」と「駐在員」を比べた場合、給与などの待遇面や安定性の面で「駐在員」が圧倒的に恵まれていることは先に述べました。でも自分で国や就職先を選べる点、海外で働くチャンスを得る面以外にも「現地採用」を選ぶメリットはあります。

それは未来のキャリアを作っていく自由度です。

私がベトナムで現地採用として働いている15名程度の人たちと話をした時、彼らの8割以上の人が将来の起業することを意識していました。そしてそのためのスキルや語学、マネジメント能力をベトナムで磨いているとのことでした。

彼らは現状の待遇にある程度満足しているものの、常に2〜3年後の未来のために今の仕事をしているようでした。彼らの何人かはベトナムで新会社や新しいオフィスの立ち上げメンバーでかなりの経験とノウハウ、人脈を築いていて、既に独立してやっていく自信もあるとおっしゃられる方もいました。

一方、「駐在員」としてベトナムに来ている人とも話をしましたが、ほとんどの人は今後も今の会社で働くつもりでした。3年程ベトナムで働いた後日本の本社に戻り、その後も同じ会社で働くという前提で仕事をしていました。

このベトナムでの事例を見ると「現地採用」で働いている人の方が将来の選択肢を広く持ち、主体的に働いているように映りました。もちろんすべての人が独立起業を志すべきとは思いません。しかし、3〜5年、海外で多くの経験をしてきたものであるならば自分で何かをスタートさせるという選択肢も一つにいれても良いのではないでしょうか?会社に使われるのではなく、今の環境を使って将来の礎を築くという意識を持つ必要があると思いました。

4.「海外駐在」「現地採用」のそれぞれのキャリアの選択肢

次に「海外駐在」「現地採用」を選んだ場合のそれぞれの将来のキャリアパスについて考えていきましょう。

Ⅰ.海外駐在の場合

基本的には現在所属されている会社で仕事を続けるということが前提になると思います。もちろん、キャリアを積んで、その他の選択肢を考える場合もあると思いますが、そちらは下記の「現地採用の場合」をご参照ください。

①日本本社に戻りそこでキャリアを積む

海外駐在の場合、業界、業種、会社によりますが、数年で日本の本社にポストを用意され、日本に帰国する場合が多くあります。この場合の海外での勤務は業務ローテーションの一環と見なされます。

②赴任先のスペシャリストになる

一方で、現地のスペシャリストとして現地に長く留まり、赴任先のスペシャリスト、現地法人の幹部としてキャリアを積んでいくという方向性も考えられます。特に工場勤務の技術職の場合、語学面・技術面で替えの効かないことも多く、そのような傾向が強いと考えられます。

③海外畑として現在の会社で他の国々を渡り歩く

勤務先がグローバル企業の場合で、数多くの国々に進出している場合、グローバル人材として他の国々を渡り歩くというキャリアも考えられます。例えば、成長企業で海外進出への加速している場合、海外法人・支社立ち上げのスペシャリストとしてのキャリアもあるでしょう。

Ⅱ.現地採用の場合

この場合、就職先企業で「海外駐在」として日本本社で再雇用されるケースは稀となります(もちろん活躍が認められ「海外駐在」採用されるケースもありますが。)。そのため下記のような選択肢があります。

①現地採用として、現地企業で働き続ける

「現地採用」の待遇が「海外駐在」には及ばないと言えども、現地の方々の数倍の給料をもらっているわけですし、現地である程度の蓄えを貯めつつ、普通に生活していくことはもちろん可能です。慣れ親しんだ好きな職場で仕事を続けていくというのは有力な選択肢の一つでしょう。

②同じ国もしくは他の国で転職してキャリアアップを目指す

英語や現地語でのマネジメント経験を持った人材は、グローバルに事業を展開する企業にとっては非常に欲しい人材であり、今後ますますそのニーズは高まっていくでしょう。そのため、同じ国もしくは他の国に進出している企業に転職するのも検討することができます。

③日本で別の企業に転職をする

英語や現地語でのマネジメント経験を持った人材のニーズは、何も海外の事業所だけには留まりません。日本国内においても、海外事業展開をする上で、海外事業所や子会社を管理する部門はありますし、海外に取引先が多くある企業はいくらでもあります。そういった企業に転職をするというのも選択肢に加えることができます。

④日本国内及び海外で起業を目指す

海外で現地採用で働いている方に話を聞くと、いずれ自分も日本国内か海外で起業をしたいという方に数多くお会いします。起業のチャンスを考えた場合、現在の日本国内でするよりも、現在成長著しい海外の方が多いように感じます。もちろん簡単なことではありませんが、夢のある魅力的なキャリアです。

⑤日本本社での本社採用を目指す

「Ⅰ.海外駐在の場合」での触れましたが、「現地採用」であってもその仕事ぶりが認められ、日本国内での本社採用となったり、本社採用として「海外駐在」待遇になるケースも何度か見てきました。こちらも有力な選択肢であると言えるでしょう。

5.それでも海外駐在員を目指したい人はどうすれば良いのか?

自由度は低いものの、給与面の待遇も良く安定している「駐在員」を希望する人も多いと思います。しかし、これは狙ってすぐに手に入れられるポジションかというとそうでもありません。

「駐在員」はあくまで企業側の意思で海外に駐在するわけなので仕方がないと思います。ただ「駐在員」になれる可能性を広げることはできます。

まず日本で企業に入社する際にはグローバル企業か今後海外に進出可能性の高い企業を選ぶ必要があります。今後、海外進出をしないと生き残りの難しい一定規模以上の製造メーカーなども良いかもしれません。そして、「海外駐在」のポストが空いた、もしくは新しく海外進出が決まった場合にすぐに手を挙げられるように、英語などの語学もある程度マスターしておく必要があります。

また、そのような情報をいち早く入手できるような社内人脈もあった方が良いですし、もちろん普段の仕事もきちんとこなし、回りからの信頼も得ておく必要があります。

そして「海外駐在」のポストが空いたら、すかさずそのポジションをゲットするために積極的にアピールします。

常日頃から回りに将来的に海外に行きたいこと伝えておくことも必要でしょう。他部署や子会社での「海外駐在」のポジションが出来た情報を入手出来るかもしれません。このように海外に出る可能性を広げ続けるという意識で毎日の業務と語学の勉強に励んで下さい。

いずれ駐在員・現地採用という括りはなくなっていく

シンガポールの転職エージェントにお伺いをしてお話を伺った時に担当者の方がおっしゃった言葉が印象的でした。

「いずれ駐在員・現地採用という括りはなくなっていくでしょうね。」

私もそう思います。今後日本の企業はどんどん海外に出ていかなくては生き残れない状況になってくるでしょう。そんな状況の中、グローバル化した企業において採用された場所によって待遇が大幅に異なるというのは馬鹿げています。

また世界のグローバル企業では統一した尺度によって報酬が決まる流れになりつつあります。既にグローバル化された日本もそのような人事制度に移行しつつありますし、他の企業も徐々にそのような流れになっていくでしょう。

その時どれくらいの日本人が今の待遇を維持して働いていくことができるでしょうか?

10年後のあなたはどうですか?そして将来に対して今何ができますか?

 

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岡本 琢磨(Takuma Okamoto)

Beyond the Border(ビヨンドザボーダー株式会社)代表取締役 / 海外転職カウンセラー・コーチ / フィリピン・セブ英語留学クロスロード代表・公認会計士 / 1979年5月8日生まれ / 慶応義塾大学経済学部卒