カンボジアで人材・教育インフラを創るべく奮闘中!女性起業家・鹽井晴香さんの熱意と行動力溢れるストーリー
「カンボジアで人材・教育の仕事がしたい!」
学生時代に抱いた想いを胸に、周りの方々を巻き込みながら突き進んできたのは、カンボジアでAyum Japan Consuluting Co.,Ltdを創業した、鹽井晴香(しおい はるか)さんです。
幼い頃から、何事も一度決めたら徹底的にやり抜いてきたという鹽井さん。
とあるきっかけで国際協力の活動に関心を持ったことから、国際協力団体を探して加入し、さらに学びを深めるために、大学でも国際協力を専攻。
大学時代にカンボジアを訪れ、現地で可能性と課題の両方を肌で感じながら過ごす中で、人材・教育の分野でカンボジアと向き合っていくことを決意しました。
その想いを胸に、多岐にわたる人材ビジネスを展開する、株式会社パソナ(以下、本文では「パソナ」と記載)に入社。
本業で圧倒的な実績を上げるかたわら、社内でカンボジア部を創設するなど、周りを巻き込みながらどんどん行動を重ねた末、社内休職制度を利用して休職中にカンボジアで起業され、今に至ります。
想いの実現に向けて、行動力を発揮しながら果敢に進んできた鹽井さんの姿から、きっとたくさんの刺激が得られるはず。
ぜひ最後までお読みください!
2014年 龍谷大学国際文化学部卒業。大学時代にカンボジアでインターンシップを経験する中で、「カンボジアで人材・教育の事業をしたい!」という想いを抱き、新卒で人材サービスを手がける株式会社パソナに入社。約4年間派遣サービスの営業に従事するなかで、新人賞・MVPや個人売上3億円超などの実績を残すかたわら、社内で役員と若手社員を巻き込みカンボジア部を創設。その後、社外で一般社団法人を立ち上げ。2018年7月に休職制度を利用して休職中に、カンボジアでAyum Japan Consuluting Co.,Ltdを創業。現在は社員11名でカンボジア国内の採用支援・企業研修・人事コンサルティングなどを展開している。2020年よりiU専門職大学客員教員に就任するなど、ほかにも多岐にわたって活躍中。
*鹽井さんから頂戴した資料(紙媒体)と当日伺ったお話をもとに執筆。
なお、本記事は、2020年6月の取材時点での内容です。
目次
「カンボジアで、人材と教育の仕事がしたい!」という想いが芽生える
── 現在カンボジアでご活躍されている鹽井さんですが、もともと海外にご関心があったのでしょうか?
正直なところ、海外にこだわっていたというよりも、やると決めたことが「カンボジアで人材と教育の仕事をする」だったんです。
幼い頃から、一度決めたら、成果が出るまでやり続けるタイプでした。
両親の教えもあり、小学校の頃から何をするときでも、「どこまでするのか」「何のためにするのか」を常に考えながら進んできました。
カンボジアについても同様に、高校生の頃からずっと国際協力の活動を続けていく中で、現地にも足を運び、一度関わったからにはきちんと向き合っていきたいと感じたんです。
── 国際協力の活動に関心を持った、きっかけについて教えていただけますか?
高校生の頃、カンボジアの内戦を題材にしたドキュメンタリーを見たときに、衝撃を受けたことがきっかけです。
それまでボーイスカウトを15年間続ける中で、さまざまな国の方々と触れ合う機会はありましたが、彼らの暮らしぶりにまで思い至ったことがありませんでした。
このとき初めて、今まで出会ってきた他国の方々はそれぞれ事情を抱えていることを知ると同時に、自分たちがいかに恵まれた環境に生まれたのかに気づきました。
それから居ても立ってもいられず、その日の夜に教育支援を行っている国際協力団体を探し、すぐに加入しました。
それまで続けていたボーイスカウトでは、直接的なアプローチは募金活動しかなく、国際協力の領域で、他に自分にできることを探したいと思ったんです。
── その日のうちに・・・! 行動力に溢れる、鹽井さんの様子が伝わってきます。
その団体で一緒に活動していた、仲間の行動力にはもっと驚かれると思います。
高校生ながら、政治家の方や大学教授を連れてくるなど、当たり前のように、周りを巻き込めるメンバーが揃っていました。
それまで学校や部活、ボーイスカウトなど、さまざまな世界を見てきましたが、まったく違ったタイプの仲間に出会えて、とても良い経験ができました。
当時はまだ高校生で、資金もなく、全員が現地で活動することは難しかったので、「どうしたらもっと社会がよくなるのか、高校生の自分たちにできることは何なのか」について考え、ディスカッションをしていました。
その過程で、国際協力についてもっと深く学びたいと思い、国際協力を学べる大学に進学しました。
そして大学進学後、さまざまな行動を積み重ねていくなかで、「カンボジアで人材・教育の仕事がしたい!」と思うようになりました。
── そこには一体、どのような背景があったのでしょうか?
実は、最初からカンボジアに決めていた訳ではなく、もともとは40年前に祖父が働いていたバングラデシュに行こうと思っていました。
ただ、残念ながら、治安の悪化で入国が難しくなってしまったんです。
たまたまその頃、カンボジアにゆかりのある方とお会いする機会が続き、カンボジアに縁を感じるようになりました。
なかでも、フォトジャーナリストの安田菜津紀さんを授業でお招きした際に、一緒にカンボジアに行かないかとお誘いいただき、カンボジアでのスタディーツアーに参加したことが大きなきっかけになりました。
現地でさまざまな角度からカンボジアという国を見るなかで、ソーシャルビジネスをされている起業家の方にお話を伺う機会があり、直感的に「これだ!」と思ったんです。
気がつけば、「半年後にここで働かせてください!」とお願いをしていて、半年後に本当にカンボジアでインターンシップをしていました(笑)。
── 有言実行、素晴らしいです! そして、続きがすごく気になります(笑)!
カンボジアで実際に業務に当たるなかで、社会課題とビジネスチャンスの両方があると感じました。
それを踏まえ、改めて自分自身の今後の在り方を整理する過程で、「カンボジアで人材・教育の仕事がしたい!」という想いが見えてきたんです。
当時のカンボジアは、まだイオンモールもなく、日系企業の進出数が約50社という時代。
そこに、外資100%で法人を設立できて、通貨が米ドルという環境があるので、外資系企業の進出が今後どんどん増えると、学生ながら思ったんです。
同時に、英語ができないと仕事に就けないと言われて育つ若い方が多く、英語ができる人材が多いことを知りました。
外資系にとって、英語のできる人材が多いことは進出のポイントになるのではないかと思い、可能性を感じました。
一方、内戦の影響で教育制度が崩壊しており、きちんと教育を受けられないまま社会に出て行く人たちが多いという状況もありました。
そこで、これから社会に出て行く層へのアプローチが大切なのではないかと思ったんです。
それに、就職活動に向けて早めに動いていた私は、当時すでにパソナと出会っていました。
社会の問題点を解決するという企業理念や、そこに強く共感しながら働く人たちを知り、直感的に「この会社に入社したい!」と思っていました。
「カンボジア」×「パソナ」で考えたとき、人材と教育のビジネスを通してカンボジアと向き合っていきたいと思ったんです。
想いを語るだけでは終わらせない! 周りを巻き込み奔走し続ける
── 念願叶ってパソナへ入社。お仕事はどうでしたか?
お客様に恵まれ、楽しい日々を過ごしていただけでなく、それが数字にも結びついていて、とても充実していました。
ビジネスマナーや営業スタイル、考え方など、お客様に教えていただいたことが多く、本当に感謝しています。
入社当初から「私が経営者なら、自分を客観的にどう評価するか」という視点で見ることは意識していました。
だからこそ、2年目に社内の任意活動でカンボジア部を立ち上げたときも、会社に活動を応援してもらうためには、まずは本業での売上で貢献することが必要不可欠だと思っていました。
そのため、立ち上げ当初、私以外はすべて1年目の社員だったこともあり、活動の多くは営業研修でした。
結果的に、幹部メンバー全員が各部署でMVPを獲得し、そこから社内で応援者を集めていきました。
今振り返ると、この流れを作れたからこそ、今があると思えます・・・!
── 具体的に、教えていただけますか?
入社後もカンボジアへの想いは強く、カンボジアに行きたいと思いながらも、踏み切れずに悩んでいた時期がありました。
自らの思いでカンボジア部を設立し、約30名のメンバーがいたので、中途半端なまま、自分だけが現地に行くのはどうなのだろうかと思っていたんです。
また、営業でももっと成果が出せるのではないかと感じていた部分もありました。
その頃、ある専務に会う度に「いつカンボジアに行くの?まだ日本にいるの?」と言われ続けました。
ある日ついに、「カンボジアに行きなさい」と言われる夢を見て、その話を専務にしたところ、その場で人事部に一緒に行くことになり、休職が決まりました(笑)。
最終的に、1年間で月間MVPを8〜9回獲得し、プレイヤーとしての目標だった売上3億円を達成するなど、やり残したことはないと思えるまでやりきれたことも、決断を後押しした部分はありましたね・・・!
会社に夢を応援してくれる体制がある上に、大先輩の方々が個人として応援してくださった部分もあり、今でも感謝の気持ちでいっぱいです。
── カンボジアで「起業」という選択肢を選んだのは、なぜですか?
もともと起業願望が強かった訳ではありませんが、パソナの中で、起業家育成セミナーを受けさせてもらったり、創業者である代表から直々に気にかけてもらうようになったりするなかで、起業を1つの選択肢として意識するようにはなっていました。
想いの実現にあたって、パソナの出資制度を活用することも考えました。
ただ、今までパソナの役員の方々や会社という大きな盾に守られて、ぬくぬくと育ってきたので、パソナという名前がない厳しい道で、リスクを背負ってやり抜く覚悟が自分には必要だと思いました。
それが結果的に、自身が思い描く理想の社会像やサービスの実現に繋がるのではないかと信じ、自己資本での起業という道を選びました。
── 事業を軌道に乗せるまでに、苦労したことはありますか?
今も軌道に乗っているとは思っていないので、なんとも言えませんが、立ち上げからある程度安定させるまでの道のりでは、特に苦労をしたと感じませんでした。
苦労を感じるよりも、「やるしかない!」と思って、必死で毎日を過ごしていました。
波のある事業モデルのため、何度か危なくなる時期がありましたが、「起業したらみんなが通る道」としか思っていなかったと思います。
そして悩んだときこそメンバーに相談したら、思いのほか気持ちが楽になったり、助けられていることが多く、前向きに乗り越えることができたのではないかと思います。
また、それぞれのメンバーが「自分にできることはなにか」を考え、前向きに頑張ってくれる姿に一番救われてきた気がします。
「オンリーワンのサービスを作り続ける!」 Ayumのこだわり
── Ayumの事業について教えていただけますか?
「人の可能性を引き出し、共に歩む」をミッションに、企業様と求職者様の双方にアプローチできる人材・教育の専門家として、カンボジアの人材・教育インフラを創っていくことを目指しています。
具体的には、採用支援、企業様向け社員研修、組織・人事コンサルティングなどを行っています。
創業以来、お客様・求職者様をはじめ、本当にたくさんの方々に支えられてきました。
これまでお世話になった方々に、心から良かったと思っていただけるサービスを提供し続けることで、その期待に応えられるよう、日々奮闘しています。
また、既存の事業に頼るだけではなく、お客様の課題を1つ1つ解決できるサービスをどんどん創っていくことが何よりも大切だとも感じています。
── サービスを作り上げるために、心がけていることはありますか?
「人の可能性を引き出し、共に歩む」というミッションを体現していくことが、一番シンプルな答えかもしれません。
企業様と求職者様にとって「本当に」最適な提案を!
人材紹介のビジネスモデルでは、企業様が求職者様をより高い給与水準でご採用頂いた方が売上自体は上がります。
ただ、相場や適正な給与水準とかけ離れた方を採用すると、企業様にとって損失になるだけでなく、長い目で見たときに、試用期間をクリアできないなど、求職者様にとってもプラスにはなりません。
弊社では、候補者様をスクリーニングする際、企業様に代わって厳しく審査を行った上で、希望される給与水準に対して、これまでの経歴に見合った給与額をしっかりと求職者様に伝えています。
その上で、希望給与額を譲れない場合は、求人のご紹介が難しい旨をお伝えすることもあります。
一方、企業様に対しては、適切な給与額でご採用いただけるよう、相場も踏まえた上で、最適なご提案を心がけています。
カンボジアに限らず、求職者様の給与を引き上げるのが業界の流れです。
弊社はむやみに給与を引き上げるのではなく、研修や増員に向けた体制づくりなど、他の形でお客様にとってプラスになるご提案をしています。
それが、お客様から信頼して選んでいただけることに繋がっていると思っています。
入社3ヶ月以内に2回の無料研修など、徹底したフォローアップ
入社3ヶ月以内に2回の無料研修を実施しているところは、弊社ならではの強みです。
1回目は入社時研修、2回目はフォローアップ座談会という形式で実施しており、研修を通して見えてきた課題や新入社員の方々の所感などを、企業様の日本人担当者の方にお伝えしています。
お客様の課題を的確に把握することで、人事コンサルティング領域において、より深みのあるご提案ができるようになりました。
同時に、求職者様との信頼関係構築にも繋がっています。
カンボジアでは悩みをなかなか打ち明けられない方も多く、電話だけだと「大丈夫」としか言ってくれなかったりもします。
研修のタイミングで、対面でもヒアリングをする機会を持つことで、何かあったときに相談しやすい関係性を築いています。
私とパソナ時代から一緒に働いてきた松下が、長年人材派遣サービスに携わっており、人材紹介のサービスに人材派遣のサービスの良さを取り入れたいと思ったことから、フォローアップにはすごく力を入れています。
── パソナでの経験もしっかり活かされているんですね! ほかにパソナ時代の経験を活かしている点はありますか?
現地特有の事情は考慮する必要がありますが、国が違っても、基本的な考え方や感覚は変わらないと思います。
したがって、基本的にはパソナで学んだことをカンボジアでのビジネスに活かしています。
パソナは、人材サービスにはCMを打たない方針でした。
一度社長にその理由を聞いたところ、このように返ってきました。
たとえCMで多くの求職者様を獲得できたとしても、優秀な人材を探すには時間が掛かり、結局良いと思える人材に一握りしか出会えない。
その分、自分たちのサービスを提供する方々にしっかりと思いやりを持って向き合い続けて、スタッフさんに喜ばれることをした方がいいと思う。
それが、業界1位の顧客満足度に繋がっていました。
1人の営業マンとして誇りでしたし、このときの言葉や実体験は、今の会社の方針にも繋がっています。
── 全社一丸となって取り組める、環境づくりの秘訣を教えていただけますか?
3ヶ月に1回、会社のビジョン・ミッション・行動指針の理解を深めるためのキックオフミーティングを行っています。
キックオフミーティングでは、「会社がなぜ存在するのか」、「Ayumらしさとは何か」を常に意識できるようにするのはもちろん、自分の言葉で言語化できるようにしています。
その過程で、目指したいサービスや会社について、全員で共通の認識を持てるようにしています。
会社全体として、各自が自分にしかできないことをしっかり伸ばしながら業務を進めるようにしているので、私自身も、なるだけメンバーの強みを見つける努力をしています。
毎月全社員と面談を実施し、それぞれの強みや今後携わりたい業務を把握した上で、定期的に業務内容の改善もしています。
「仲間とともに事業を作っていくことが最高の幸せ!」鹽井さんの今とこれから
── 鹽井さんご自身が感じる、お仕事のやりがいについて教えていただけますか?
出会った仲間たちと一緒に事業を作っていけるのが、何よりも大きなやりがいです。
このメンバーだからこそ、良いサービスを創っていけると思っていますし、素敵な仲間たちと日々仕事に臨めることが幸せだと感じています。
カンボジアならではの面白みを挙げるとしたら、日本と比べて、お客様との距離がすごく近いところです。
日頃からお食事をご一緒させていただくなど、プライベートなお付き合いもあるお客様の力になれることがすごく嬉しいですね・・・!
── 逆に、難しさや課題を感じているところはありますか?
コロナ禍を受け、業態的に安定しないところには、改めて難しさを感じています。
人材紹介に対する成功報酬で成り立つビジネスモデルのため、景気が悪化し、企業様が採用を控えるような状況が続くと、売上を作ることが難しくなってしまいます。
そのため、新たな柱となる事業やお客様の力になれるサービスを創り続けていきたいと思っています。
── 今後については、どのようにお考えでしょうか?
人が自分らしく、豊かに生きていけるような事業を多角展開したいと考えています。
すでにお話した通り、既存の事業だけで続けていくことは難しいと考えています。
もともと私は、パソナの本社のような機能をカンボジアに作りたいと思っており、今後はなるだけ早く、その段階に移れるような体制づくりを進めていきたいですね!
同時に、カンボジアでは晩婚化と出生率の低下が進んでいます。
保育園が少なく、遠く離れた両親のもとに預けるしかないなど、子供を育てるための環境が整っていないからです。
弊社は女性が多いので、まずは社内で子育てをしながら働ける環境を作った上で、それが当たり前の社会づくりにも寄与していきたいと思っています。
── 最後に、海外で働きたい方へのメッセージをお願いします!
海外に出ても、日本人として働く以上、日本の商習慣やビジネスマナーはすごく大切です。
「海外に出る=外国人の方と働く」というイメージをお持ちの方も多いですが、日本人として日本人のお客様の対応を任されたり、日本の本社とやり取りをしたりする業務もたくさんあります。
また、現地の方向けの営業については、現地の方同士の方がスムーズに進みます。
「日本人がなぜ採用されるのか」という背景やメリット・デメリットをきちんと理解した上で、海外で働くという選択をした方が、ギャップが少ないかと思っています。
その点も理解しながら、海外でチャレンジする方が増えると嬉しいなぁと思いますし、そのような方々をサポートできる人、会社でありたいです。
鹽井さん、この度は貴重なお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございました!
なお、本記事は2020年6月時点での取材内容をもとに執筆しています。
鹽井さんより、現在は社員数が8名から11名に、オフィスも以前の3倍の広さとなる新しいオフィスへ移転し、更なる事業の発展に向けて動かれている様子を伺っております。
今後のご活躍と事業の発展、心より応援しております!