海外就職成功事例

「選択肢は1つじゃない!」シドニーで会計士として活躍する前田さんから学ぶ、キャリア選択のヒント

「僕の発信が、“こんな生き方もあるんだ!”というヒントになると嬉しい!」

そうお話されたのは、シドニーで会計士としてご活躍されている、前田達也(まえだ たつや)さん。
そんな前田さんの日々の発信がきっかけで、今回お話を伺うことになりました。

新卒で日本の会社に就職したものの、肌に合わず1年で退職。
その後、1冊の本の影響を受け、バックパッカーとして海外を旅したのがきっかけで、海外で過ごす面白さに気づいた前田さん。

旅をする中で、英語ができないもどかしさや悔しさを強く感じたところから、英語を学び、カナダ・オーストラリアでのワーキングホリデーにチャレンジ。
出会った人から得た学びや気づきを大切にしながら行動していくことで、オーストラリア・シドニーで会計士として永住権を取得し、現在に至ります。

今回はそんな前田さんに、以下の3点についてお話を伺ってきました!

  • どのような経緯でオーストラリアで就職するに至ったのか
  • オーストラリアでどのようにキャリアを築き上げてきたのか
  • オーストラリアで働くメリットとデメリット

シドニー在住18年目を迎えた前田さんが、過去を振り返りながら、良かったことも「もっとこうすれば良かった!」というポイントもお話してくださっているので、きっと参考になるはず。
ぜひ最後までお読みください!

前田達也さん プロフィール
大学卒業後に日本で就職するも、仕事が合わず1年で退職。フリーターをしながら、バックパッカーとして海外を旅した後、カナダとオーストラリアでワーキングホリデーに挑戦。その後、オーストラリア・シドニーの大学院に留学し、会計士として永住権を取得。現在はシドニーのローカル企業で会計士として勤務している。
前田さんのブログ記事と当日伺ったお話をもとに執筆。

 

なお、本記事は、2020年6月の取材時点での内容です。

 

1冊の本がきっかけで飛び出した海外。「もっと自由でいいんだ!」と気づく

 

──  現在オーストラリアでご活躍されている前田さんですが、海外にはもともと関心があったのでしょうか?

 

じつは、もともと海外に関心があった訳ではなく、きっかけは1冊の本との出会いでした。

大学時代は演劇やミュージカルが好きで、卒業後はテレビや舞台での照明の演出に関わる仕事をしていました。
ただ、残念ながら、上下関係の厳しい世界が僕の肌には合わず、約1年で退職することになったんです。

ちょうどその頃出会ったのが、沢木耕太郎さんの『深夜特急』でした。
この本の主人公のように、「自由に旅がしてみたい!」と思った僕は、物語と同じ道をたどるかのように、バックパッカーとして旅に出たんです。

結果的に、それが僕にとって人生の転機となりました。

 

──  具体的に、教えていただけますか?

 

「もっと自由でいいんだ!」と気づきました。
バックパッカーとして旅をするなかで、学生・社会人を問わず、海外を自由に旅する日本人にたくさん出会いました。
彼らと話をするうちに、大学を卒業したら、会社に就職して働くという、いわゆる“普通”の道以外にも、いろいろな生き方があると気づいたんです。

また、ワーキングホリデーという選択肢を知るきっかけにもなりました。
旅の途中で出会った日本人の青年が、ワーキングホリデーで1年間オーストラリアに滞在しており、英語も堪能でした。
当時まったく英語ができなかった僕は、彼が英語を流暢に話すのを見て、羨ましさと悔しさを同時に感じたんです。

 

──  それが、ワーキングホリデーにチャレンジするきっかけになったのでしょうか?

 

そうですね・・・!
バックパッカーとして海外に出てみて、英語がまったくできないことにもどかしさを感じ、英語を勉強したくなったのだと思います。

日本に帰国後、ワーキングホリデーについて改めて調べた上で、まずはカナダでチャレンジしようと決めました。
なぜカナダを選んだのかは忘れてしまいましたが、おそらく年齢制限の問題で、先にカナダへ行くことにしたと記憶しています。

今振り返ると、当時の悔しさやもどかしさがあったからこそ、その後の英語力向上にも繋がっている気がします。

 

──  英語力を伸ばすための具体的な取り組みについて教えていただけますか?

 

まずは、日本で仕事をしながら英会話スクールに半年ほど通いました。
その合間に、基本的な単語や熟語については、本を買って自習に励みました。
カナダへ行くと決めた後、今の自分の英語力のままでは、現地でコミュニケーションを取るのは難しいと思ったからです。

次に、カナダで1〜2ヶ月ほど語学学校に通いながら、中級レベルの英会話スキルを身につけました。
その上で、現地での仕事や生活を通して実践的な英語のスキルを磨いていきました。

日本に帰国してオーストラリアへ行く前にも、英会話喫茶などに通いながら、英語に触れ続けたのも良かったと思います。
ある程度英語力がある状態でオーストラリアに渡ったからこそ、現地で仕事のチャンスが舞い込んできたと思うからです。

 

──  カナダから帰国後、オーストラリアでチャレンジしようと思ったのは、なぜでしょうか?

 

正直なところ、日本にいたくなかったという逃げの気持ちも大きかった気がします。

カナダから帰国して、1年ほどは日本でフリーターをしていました。
その間、周囲の友人は正社員として会社に勤務しており、結婚して家族もできていました。
友人たちを見ていると、完全にレールから外れてしまったような気がしたんです。
もう一度日本で就職するイメージも持てず、オーストラリア行きを決断しました。

とはいえ、ワーキングホリデーで1年だけ滞在するつもりで、まさか永住権を取得するなんて、思ってもいませんでしたが・・・!

 

さまざまな偶然が重なり、オーストラリアで永住権を取得。 その過程とその後のキャリアについて聞いてみた!

ワーキングホリデーで1年間オーストラリアに滞在後、学生ビザを使ってカレッジに進学し、ビジネスマネジメントを専攻した前田さん。
カレッジ在学中に永住権取得のチャンスがあると知り、さまざまな選択肢を吟味した結果、大学院で会計学を学んだ後に、永住権を取得され、現在に至ります。

 

──  最終的に、永住権を取得できた秘訣のようなものはありますか?

 

秘訣というほどのものはなく、さまざまな偶然の連続でした。
たくさんの方々と出会い、情報やアドバイスをいただけたことが大きかったと思います。

僕自身の経験から感じていることや後悔していることなどをベースにお話しますね。

 

ある程度の英語力を身につけておく

ワーキングホリデーでシドニーに来た当初、韓国人経営のゲストハウスで受付の仕事をいただいたのが、僕にとって良いスタートになったと思います。

当時の僕は1ヶ月間、そのゲストハウスで滞在しながら、特に何もせずに過ごしていましたが、数名の受付スタッフと親しくなったんです。
ちょうどその頃、スタッフの帰国により受付に欠員が出たので、「受付業務をやってみない?」とお誘いをいただきました。
簡単な業務とはいえ、英語を使うので、仮に僕がまったく英語ができなければ、巡ってこなかったチャンスだと思うんです。

そして、このゲストハウスでの経験があったからこそ、カレッジ時代からユースホステルの受付として勤務することができ、最終的に正社員として採用していただけました。

 

社内で良好な人間関係を築き上げる

オーストラリアでは、社内でポジションに空きが出た場合、内部異動という形で社内から採用することもよくあります。

僕の場合、ユースホステルの受付として勤務している間、率先して同僚を手伝うなど、積極的に仕事をこなしながら、経理部のマネージャーをはじめ、社内の他部署の方々とも良い関係を築いていました。
そのおかげもあって、経理部のポジションに空きが出た際、彼らがいち早く情報を教えてくれたんです。

このように、日頃から社内で良好な人間関係を築き上げておくことはポイントだと思います。

 

役割を理解して、キャリアを築いていく

僕自身が意識していたことではなく、結果的に良かった点にはなりますが、会計や経理を軸にキャリア形成ができたのは良かったと思います。

オーストラリア人で会計や経理といった細かい仕事を好む人は少なく、会計や経理ができる人のニーズは常にあります。
実際、会計や経理をインド系や中国系など、アジア系移民の方々が担っているケースも多いんです。
そのため、日本人を含めたアジア人がキャリアを築く上での偏見が少なく、キャリアアップのチャンスも大いにあります。

セールスやミーティングでのファシリテーションなどは、言葉の壁もあるので、オーストラリア人には勝てない部分も正直あります。
オーストラリア人が得意としない、「会社が円滑に業務を進められるようサポートする」という役割でキャリア形成をしていくのも、ひとつの考え方だと思っています。

 

なるだけ早いうちに実務経験や職歴を作る

僕が後悔している部分ですが、早いうちから会計や経理の経験を積みながら、専門性を高めていければ良かったと思っています。
僕の場合、もともと会計に関するバックグラウンドがあった訳ではなく、まさかオーストラリアで会計を軸にキャリア形成をしていくとは思ってもいなかったので、仕方がない部分もありますが・・・。

周囲には、大学院在籍中から大手企業で経験を積んでいる友人もいて、卒業と同時に内部異動で採用されていたり、他の企業に就職するにしても、大手企業で勤務した経歴を活かして、有利に就職活動を進めていました。

僕自身、オーストラリアで何度か転職を経験するなかで、実務経験は同じでも、前職の会社規模で採用されにくいこともあると感じています。
チャンスがあるなら、早いうちにインターンなどで、大企業での勤務経験を作れると良いかもしれません。

 

──  ユースホステルの経理部で正社員として勤務した後のキャリアについて、教えていただけますか?

 

ユースホステルの経理部で、ホテルやホスピタリティ系の会計や経理を5年ほど担当した後、同じホスピタリティ系の業界で、リゾートを運営する会社に転職し、5年間会計業務を担当しました。
ちょうど2社目で担当していた業務が、リゾート地の不動産管理に関わる会計・経理業務だったため、そこで不動産に関する知識をつけ、現職の不動産管理を行う会社に転職し、今に至ります。

転職に際しては、キャリアアップと給与を意識して動きました。
オーストラリアでも、毎年2〜3%ほど昇給はしますが、同時に物価も上がるので、さらなる給与アップを狙うためには、内部でポジションを上げるか、転職して給与を上げていく必要があります。
こちらでは欠員募集が基本で、新しくポジションを作ることは少ないので、社内で昇格のチャンスが巡って来そうにないと思った段階で、僕は外に目を向けました。

 

──  転職活動はどのように進められたのでしょうか?

 

リクルーター(転職エージェント)にお願いすることが一般的です。

正直なところ、転職活動には、2回ともかなり時間がかかりました。
面接まで進んでも、そこで落とされてしまったり、リクルーターから紹介された案件が、自分の志向と合わなかったりもするからです。

最初のうちは、面接まで進んだらすべて受けていましたし、そうした方が良いと思っています。
各ポジションについて、リクルーターの理解が甘い場合もありますし、雇用主に直接話を聞いてみないと分からない部分も多いので、きちんと話を聞いた上で判断するようにしています。

 

仕事もプライベートもバランスよく充実した今と気になる今後


*前田さんのご自宅に近い、Coledale Beachの写真(前田さんからいただきました)

 

──  現在のお仕事について、もう少し詳しく教えていただけますか?

 

おもに商業系の不動産に関する経理や会計業務を担当しています。
各不動産のオーナーがお客様で、お客様が所有するオフィスビルやショッピングモール、倉庫などから出た収益やコストの管理をしています。

同僚は、インド系・中国系はもちろん、東南アジア諸国出身の人もいるなど、多様性に富んでいます。
各不動産に会計士が一人割り当てられており、担当している不動産が違っても、お客様が同じ場合は、彼らと上手く連携を取りながら仕事を進めています。

 

──  シドニーに来て良かったことはありますか?

 

履歴書に年齢や性別を記載する必要がないので、性別や年齢を気にせず、キャリア形成ができる点がすごく良いと思います。
実際、僕自身が30歳を過ぎてから、会計士としてのキャリアを築き始めていますし、僕の友人にも同じような経歴の人はいます。
日本と比べて、新しくキャリアを築きやすいので、失敗したり、挫折してしまった場合でも、軌道修正がしやすいように感じます。

また、正社員として働く以外にも、多様な生き方があると知り、のびのびと日々を過ごせている気がします。
どうしても、日本にいた頃は「〜でなければならない」という考え方にとらわれていましたが、どのような雇用形態で働くにせよ、自分自身が幸せであればよく、気負い過ぎる必要もないのだと今は感じています。

 

──  逆に、シドニーで生活していて、大変なことはありますか?

 

今は特にありませんね・・・!

最初の頃は、ある程度英語力を身につけた状態で来たとはいえ、言葉の壁によるもどかしさを感じることもよくありましたが、ゲストハウスのアルバイトで随分鍛えられました。
また、先程もお話しましたが、転職活動には2回ともすごく苦労し、現職でやっと納得のいく給与水準にたどり着きました。

これまでいろいろありましたが、シドニー在住18年目を迎え、「良いときもあれば、悪いときもあるさ!」と考えられるようになりました。

 

──  今後については、どのようにお考えでしょうか?

 

引き続き、オーストラリアでキャリアアップ・給与アップを目指して頑張っていきたいと思っています。

同時に、会計以外にもさまざまなスキルを身につけたいと思っており、最近は情報発信にも注力しています。
ブログにコメントをいただけたり、SNSを通じてたくさんの方と繋がれることに面白みを感じているので、引き続き楽しみながら続けていきたいと思っています。
僕の発信が、「こんな生き方もあるんだ!」というヒントになると嬉しいですね・・・!

あとは、家族もいるので、家族との時間を大切にしたり、趣味のサーフィンを楽しめるような時間も大事にしていこうと思っています。

 

──  最後に、これから海外で働きたい方へのメッセージをお願いします!

 

もし海外で働くことに関心があるなら、まずは海外に出てみるのが良いと思います。

期間によらず、実際に現地で生活することで、本当に肌に合うかも分かりますし、行かないと分からない部分もきっとあります。
それに、僕が旅の途中で英語を学ぶ必要性に気づいたように、海外に出たからこそ、自分に必要なものや足りていないものが分かることもあるのではないでしょうか。

長い人生のうち、たった1年〜2年を海外で過ごしたとして、人生に影響するような大きなダメージはないと、僕は思います。
リスクを恐れて、海外に出ないことの方がもったいないので、まずは一歩踏み出してほしいですね・・・!

 

前田さん、この度は貴重なお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございました!
今後のご活躍、心より応援しております。

*今回ご紹介した前田さんのブログは>こちら
*前田さんのSNSは>TwitterInstagramYouTubestand.fm
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Jiyoung Baek

セブ留学がきっかけで東南アジアの虜に!! フィリピン・セブでの海外インターンを経て、ベトナム・ハノイで海外就職。約2年に渡って大好きな東南アジアで働きながら、旅をする生活をしていました。 現在は自身の海外経験を基に、旅するインタビュアーとして海外で活躍する方々を取材し、「海外で働くとは」について発信することで、海外で働きたいけど一歩踏み出せない方に挑戦のきっかけを作るべく奮闘中。 どんなときもアジアの眩しい陽射しのような笑顔を忘れず、頑張っています! 日々大事にしていること「やらない後悔よりやって後悔、何でもやってみる!」