VR分野で“いち早く”インドネシア起業!成功を支えた、圧倒的な「行動力」と「熱意」に迫る!
こんにちは!
BEYOND THE BORDER ライターのペクです!
「毎日何だか物足りない」、「本当はもっと好きなことがしたい!」、「もっとチャレンジングな環境に身を置きたい」・・・。
今の環境や仕事に大きな不満がある訳ではないものの、心の奥でもっと“ワクワクすること”を求めている自分がいる。
ただ、なかなか新しい環境に飛び込んだり、何かに挑戦するのはハードルが高い・・・そんな風に思っている方もいらっしゃるかもしれませんね。
今回お話を伺った宋 知勲(そう あきら)さんも日本の大手IT企業で勤務していた頃、充実した日々を送りながらも、何か物足りなさを感じていたそう。
そんな日々から抜け出すべく、小さな挑戦を積み重ねる中で出会ったVRの虜になり、インドネシアで起業。
長年お持ちだった「いつか海外で活躍したい!」という夢も併せて叶えておられます。
「まだ誰も挑戦していない場所で、前例のないことに“いち早く”取り組みたい!」
強い思いを胸に起業し、事業を軌道に乗せた今も最新技術やトレンドを“いち早く”取り入れることを意識されているという宋さん。
どんな小さな機会も逃すまいと積極的に誰かに会いに行ったり、情報収集を怠らないなど・・・常に努力と挑戦を続ける姿は圧巻でした。
VRに誰よりも深い情熱を注ぎ、「VR分野でインドネシア最高峰の会社を創り上げる」というビジョンの実現に向けて模索し続ける宋さんの姿は、海外就職・起業をご検討されている方はもちろん、「なんとなく現状に物足りなさを感じながらも、なかなか変えられない」という方にとってもきっと参考になるはず。
そんな宋さんのストーリー、是非ご一読下さい!
*本文中のお写真は宋さんご本人から頂戴したものです。
目次
宋 知勲さんとは?
2010年に早稲田大学コンピュータネットワーク工学科を卒業後、株式会社NTTデータに入社し、システムエンジニアとして5年間勤務。2015年に退職し、インドネシアで初のVRスタートアップShinta VRをインドネシア人のパートナーと共同創業。現在は社員36名で運営しており、企業向けVRシステムの受託開発、教育向けVRプロダクトの開発・導入、バーチャルタレント事業等、多岐にわたる事業を展開している。 *当日伺ったお話を基に執筆。
── 現在インドネシアで起業家としてご活動されておられますが、宋さんは元々海外に関心があったのでしょうか?
漠然とではありますが、幼い頃からいつか海外で戦ってみたいという思いがありました。
僕の父は韓国人で、韓国大手企業の駐在員として来日し、その後日本で起業しています。
異国の地で経営者として活躍する父の姿を見て、僕もそんな風にいつか海外で挑戦したいという思いがずっとありましたね。
大企業での物足りない日々を変えた、VRとの出会い
中学の頃から、インターネットを介して様々な情報を手に入れられることや、テクノロジーによりどんどん便利になる生活に関心を持ち、大学でもテクノロジーを学べるような学部を選んだという宋さん。
もちろん「いつか海外で活躍したい」という思いはありましたが、就職活動では「テクノロジーとITが世界を変える」という信念の下、就職活動を進めたそうです。
果たして、入社後は一体どんな日々を過ごしていたのでしょうか?
── 「テクノロジーとITが世界を変える」、素晴らしい信念ですね。入社後はどんな日々を過ごしていたのでしょうか?
優秀な仲間と切磋琢磨しながら、充実した日々を過ごしていました。
IT分野での進化が著しいインドでの研修に参加、オフショア開発部門のグループリーダーとして中国の上海や無錫に出張する機会も頂くなど・・・スキルや経験も積み上げられ、非常に有意義な時間を過ごしました。
ただ、入社3年目頃からずっとワクワクしない気持ちがあり、「本当にこのままでいいのか」という葛藤がありました。
会社は「与えられたことをきっちりとこなす人=優秀」という雰囲気でしたが、僕自身は自ら考えて動いていきたいタイプで・・・。
もっとワクワクすることや好きなことに挑戦していきたいという思いがありました。
── なるほど。成長実感や楽しさは感じつつも、心から夢中になれていない気がするという葛藤があったんですね。
一時は「僕が本当に好きなことって何だろう」と自問自答する日々が続きました。
「これだ!」という明確なものがないまま辞めるのは・・・なんだか違うと感じていたので。
当時は少しでも「面白い!」と思えるものには一通りすべて挑戦する日々でした。
著名な方のオンラインサロンに入る、ドローンを飛ばしてみる、ECサイトでの転売・・・考えつくものをすべて「試した」とも言えますね。
その過程で「楽しい」と本当に思えるか、ビジネスとして成り立つか否か・・・ひとつずつ考え、感じていきました。
そんな風に日々を過ごしていた2014年のある日、僕にとって大きな転機が訪れました。
── 「自分探し」をするために、まずは少しでも関心のあることにどんどん挑戦されたんですね。「転機」とは、一体何があったのでしょうか・・・?
たまたま友人が持っていたVRに触れる機会があったんです。
なんと申し上げましょうか・・・僕の身体の中に〝電流〟が走りました。
「これこそが世界を変える何かなのではないか」と強く思いましたね。
そこから今度は大企業で勤めるかたわら、土日等を使ってVRをビジネスに活かせる方法を模索する日々が続きました。
VR体験イベントの企画、ソフトウェアの製作、サロンで出会った方々とともにVRの普及活動に励みました。
今振り返ると、サロンで出会った方々と一緒に活動するなど、VRに出会うまでにいろいろ動いたからこそ繋がったものもありましたよね。
── 行動し続ける大切さが伝わるエピソード、大変参考になります。最初は会社に勤めながらVRの活動をされていたようですが、何がきっかけで起業に踏み切ったのでしょうか。
これは・・・会社を作るために自分自身を追い込みました(笑)。
自分が心から「好き!」や「面白い!」と思える仕事をしたいと思っていましたし、一度きりの人生で後悔したくなかったので。
きちんと夢中になれるものを見つけたので、もう大丈夫だという気持ちもありましたね。
失敗しても食べていけなくなるような世の中ではないので、一度ぐらいはチャレンジしてみようと、最後は割と気軽に(!?)踏み出しました。
伸びている市場で“いち早く”挑戦! インドネシアで起業し、手探りで事業を軌道に乗せるまで
── 「いつか海外で活躍したい!」という思いをお持ちだったので、海外で挑戦する道を選ばれたとは思いますが・・・起業に際して、なぜインドネシアを選んだのでしょうか?
アメリカ、韓国、中国・・・最初はどこの国で始めるかすごく悩みました。
ただ、成長を続けており、かつまだ誰もチャレンジしていない場所で“いち早く”始めたかったんです。
多方面からお話を伺う中で、大学時代に出会ったインドネシア人の親友と話をする機会がありました。
そこで、ピラミッド型の人口構成、GDP成長率といった客観的な指標から、インドネシアの可能性を感じました。
その後実際に視察でインドネシアを訪れたときも、その可能性を肌で感じましたし、何よりここで一から作り上げることが楽しそうだと心から思えたんです。
正直なところ、最初はインドネシアでVRの分野が伸びるか否かは未知数で、上手くいくかは全く分かりませんでした。
── 最初はどこの国でチャレンジするか迷っていたんですね。インドネシアで挑戦すると決めてからは、具体的にどのように動いていったのでしょうか?
インドネシアのVRコミュニティ(注)にコンタクトを取りました。
当時はオンライン英会話で英語をかじっていた程度で、ほとんど会話はできない状態でしたが、もう・・・気合いでしたね(笑)。
その過程で、最終的に後に共同創業者となるインドネシア人のパートナーと出会い、意気投合して一緒に事業を始めることになりました。
ただ、最初の1年である2015年はいきなり法人化せず、現在の“Shinta VR”という会社名と同名の団体として活動していました。
まずは「本当にビジネスとして軌道に乗るのか」を見極めるべく、地道にいろんな活動をしながら模索していましたね。
(注)各国にVRのコミュニティがあるそうです。VR Indonesia、VR Korea、VR Japanなど・・・。
── 宋さんのVRへの並々ならぬ情熱を感じます。事業はすぐに軌道に乗ったのでしょうか?
いや〜最初の1年間は本当に大変でした(苦笑)。
確かに、当時はインドネシアのVR分野では僕たち以外に誰もいない状態で、何事もいち早くチャレンジできる強みはありました。
一方、ビジネスをする上で大切な人脈やコネもありませんし、そもそもVRの認知度もまだ低く、VRをビジネスで活用する意義やメリットをいかに伝えるかに苦心しましたね。
営業活動をしても受注できない日々が続き、売上も給与もない時期もありました。
僕自身の収入も日本の会社員時代よりがくっと下がりましたし・・・。
── やはり最初はかなり大変だったんですね。苦しい時期をどのように乗り越えたのでしょうか?
日々の営業活動に加え、VRを体験できるような機会を設けられるよう、大きなイベントにはすべて出展するなど、普及活動に努めました。
とにかく「やってみないと分からない!」の精神で、1年間は地道に動き続けましたよ!
きっと・・・VRへの強い愛や情熱がないとできなかったと思います(笑)。
活動を続けているうちに、有難いことに大手企業様からの受注が決まったり、メディアで取り上げて頂けるようにもなりました。
それを機に、徐々に口コミでお客様も増えてきて・・・2016年に法人化し、現在に至ります。
答えや前例のない楽しさに溢れる「今」、キーワードはここでも“いち早く”。
── お話を伺って、VRへの愛と情熱でここまで走り続けてきたからこその「今」だと感じました。現在の事業について教えて頂けますか?
インドネシアでVRに関する、3つの事業を主に展開しています。
①企業様からの受託開発
最近では企業様での教育・研修にVRが活用されるのが世界的な潮流となっています。
例えば、実際の工場でトレーニングを積むと、慣れない作業で失敗すると怪我をする可能性もあります。
一方、VRで機械の操作等につき研修を受け、練習する場合は、失敗しても危険は一切ありませんし、機械コストも掛かりません。
製造業系の企業様の工場研修等で活用されていますね。
また、企業様のイベント等でのPRにVRをご活用頂き、楽しく製品やサービスを知って頂く機会や仕組みを作ったりもしています。
②インドネシアにおける教育プロダクトの開発・導入の推進
インドネシアの小・中学校や高校向けに、VRを通じて子供たちが楽しく学べるようなプロダクトを開発・提供しています。
例えば、VRを通して体内に入り込み、人間の臓器を見たり、化学の実験にVRを取り入れることで、危険を軽減しつつ楽しく学べるようにしています。
VRと聞くと、専門的で大きな機械が必要なように思われるかもしれませんが、インドネシアには経済的に余裕のない学校も一定数あります。
どんな学校様でもパソコンのみご用意頂ければ、比較的安価で導入して頂けるコンテンツを提供しています。
インドネシアのジョコウィ大統領が教育に力を入れている流れもあり、今年はさらなる拡大を目指していきたい領域ですね(補足:現在は35校ほどの高校で導入済とのこと)。
③バーチャルタレント事業
最近日本でもバーチャルYouTuberが流行していますが、世界的にもこのようなバーチャルキャラクターは増えています。
インドネシアで活動するバーチャルタレントを増やしつつ、エンタメ界の新しい表現方法を模索しています。
昨年は僕たちがプロデュースしたバーチャルキャラクターである、マヤ・プトゥリとデヴィ夫人がコラボレーションをしたこともありました。(詳細はこちらの動画をご覧下さい)
── VRの活用・導入事例は多岐に渡るんですね・・・大変勉強になりました! 起業当初と違い、後から進出した同業他社もいくつかあると思いますが、貴社の強みは何ですか?
現在20社ほど同業他社がありますが、“いち早く”や“最新”を常に意識するようにしています。
そのためにプロダクト開発に力を入れることはもちろん、先程申し上げたバーチャルタレントのお話など、日本や諸外国のトレンドをいち早く掴み、取り入れています。
最新技術や情報を掴み取る部分については僕が中心になって行うことが多いですね。
一方、教育プログラムのように、国や政府を巻き込む必要のある部分については、インドネシア人のパートナーをはじめとしたインドネシア人スタッフにお願いをしています。
実際、先程の教育分野については、インドネシア最大級の教育機関を巻き込み、一緒に動いていく流れを作って進んでいます。
パートナーやメンバーに恵まれたことは、本当に有難いことですね。
── やはり「いち早く」がカギですね! 今の仕事のやりがいや楽しさについて教えて頂けますか?
答えや前例のないことに挑んでいるからこそ、試行錯誤しながら出したプロダクトがヒットするなど、結果が出たときの喜びはひとしおですね。
自身が関わっていることに対して、お客様や世の中から何かしらのフィードバックを頂けることが、本当に楽しく、やりがいを感じます。
また、インドネシアでビジネスをする面白みもあります。
インドネシアの方々は日本人や韓国人が大好きなので、たとえ語学の壁があって上手く話せなくても、会って話を聞いてくれたりします。
その過程で彼らの考え方を知る機会にするのはもちろん、どんなビジネスチャンスがあるのかを知る手立てにもなっていますね。
国籍を問わず、繋がりもどんどん広がりますし、小さな機会も逃さずに飛び込むようにしています。
── とても楽しそうな様子が伝わってきます。逆に、大変なことや難しさはありますか?
時間に対する意識やマネジメント方法の違いで苦労することが多いですね。
インドネシアに根ざしてビジネスを展開しているとはいえ、当然お客様には日系企業様や日本人の方もいらっしゃいます。
日本では締切や納期に厳格ですが、インドネシアでは締切間近でも宗教上の理由でお祈りを優先せざるをえなかったり、そもそも納期に全く間に合っていなかったり・・・。
そのような部分でお客様からお叱りを受けたこともあります。
また、報連相の徹底やタスク管理など、マイクロマネジメントを嫌がる傾向があり、メンバーの士気を下げてしまったこともありましたね。
── 夢中になれるものに携わる楽しさもありますが、当然大変なこともありますよね。
インドネシア特有の文化は社内はもちろん、社外でも大変な部分がありまして・・・。
というのも、こちらはコネクション文化が非常に強く、優れたアイデアよりも築き上げられた信頼関係の方が大事にされます。
僕たちは設立4年目という比較的新しい会社なので、これまで他社が築き上げてきた関係を越えて、お付き合いをして頂けるかに苦心することが多々ありますね。
社内外問わず、インドネシアの方々と良好な関係を築けるよう、英語はもちろんインドネシア語の習得に励んでいます。
また、日本とは文化が違いますが、日本の常識や考えを押し付けるのではなく、インドネシアの文化や考え方を尊重し、合わせる気持ちを何より大切にしています。
── とても素敵な心構えですね! これまでいろいろと大変なこともあったと思いますが、困難を乗り越える秘訣のようなものはありますか?
これまで手探りで進めてきたので、お客様からお叱りを受けたことはもちろん、社内マネジメントでも、当然多くの失敗をしています。
ただ、失敗があったからこそ学び、気付いたこともあって・・・。
苦しいときも頑張り抜けたのは・・・VRへの情熱と「VR分野でインドネシア最高峰の会社を創り上げる」という強い思いがあったことに尽きます。
その実現のためなら、どんなことも乗り越えていきたいですし、たとえ困難に直面したとしても、どこかにきっと解決策があると思っています。
気になる今後と海外で働きたい方へのメッセージ
── 強い思いで困難を乗り越え続けてきたからこその「今」だと、強く感じるお話でした。今後についてはどのようにお考えでしょうか?
今はジャカルタが中心ですが、インドネシア中に僕たちのプロダクトを広げていきたいと考えています。
特に、教育に関しては今年が勝負の年だと思っているので、資金調達も検討しており、インドネシア中の学校に一気に広げていきたいですね。
バーチャルタレント事業も、将来的には芸能事務所を設立し、所属する多数のキャラクターたちが企業様のインフルエンサーやYouTuberなど、芸能活動ができるような仕組みづくりをしていきたいと思っています。
また、現状のお客様はインドネシアが8割、日本が2割程度となっています。
他の海外の国々にも目を向け、今後はどんどん拠点を広げて行きたいですね。
── 今回のお話の中で、宋さんにとって“いち早く”がカギでしたよね! その実践のために心掛けていることはありますか?
当然のことかもしれませんが、情報収集を怠らないことですね。
そのために、毎日テクノロジー領域を中心に、隙間時間を活用しながらメディアを隈なくチェックしています。
あとは、面白そうな方がいたらすぐに会いに行くようにしています。
オフラインだからこそ引き出せる情報もあり、このフットワークの軽さは僕自身の強みだと思っています。
── 今日は貴重なお話、本当にありがとうございました。 最後に海外で働きたい方へのメッセージをお願いします!
海外で働くことに関心があるのなら、まずは挑戦してみればいいと僕は思っています。
失敗しても死ぬ訳ではありませんし、言葉の壁や経済的な不安などはありますが、「思い」があればなんとかなるものです。
僕自身、英語力も人脈も資金も充分ではないまま飛び込みましたが、手探りでなんとかしてきましたし・・・。
いきなり飛び込むのが不安であれば、まずは来てみるだけでも何かが変わるかもしれませんよ!
まとめ
いかがでしたか?
「まだ誰も挑戦していない場所で、前例のないことに“いち早く”取り組みたい!」
日本の大企業で物足りなさを感じていた頃から、小さな挑戦を少しずつ積み重ねていく中でVRの虜になり、手探りで事業を軌道に乗せた宋さん。
「海外に関心があるならまずは挑戦!」というお言葉はとても宋さんらしいお言葉で、物足りない現状を変えるべく努力を続けた結果、夢を叶えた姿がとても素敵でした。
異国の地で事業をする中で、マネジメントやお客様との関係構築で失敗することや苦労することもたくさんあるとのこと。
失敗から学びながら、「きっとどこかに解決策はあるはず」と前向きに進み続ける姿、とても力強さを感じますよね!
現地の方とのスムーズな関係構築のために語学の習得に励んだり、現地の方の文化や考え方を尊重するという姿勢も、海外で働く方々にとって参考になる姿勢だと思います。
宋さん、この度は貴重なお話をお聞かせ頂きまして、誠にありがとうございました!
今後の益々のご活躍、並びに貴社の益々のご発展を心より祈念しております。