アジア起業家

ベトナムでカフェ経営失敗から映像事業で再び起業!“夢に近い場所”で挑み続ける井上翔太さんの奮闘記

こんにちは!
BEYOND THE BORDER ライターのペクです!

突然ですが、皆さんは「夢」という言葉を聞くと、どんなことを思い浮かべますか?
限られた人が叶えられる、実現するまでの道のりが長い、そもそも夢は見るだけのもの・・・。
そんな風に、夢を叶えるのは難しいというイメージを持つ方が多いのではないでしょうか?

今回お話を伺った井上翔太さんは、学生時代から「自分で事業をしたい」という強い思いを抱き続けていました。
そんな井上さんはベトナム・ハノイでカフェを経営した後、現在は映像事業を手掛ける起業家として活動しておられ、二度も「自分で事業をする」という夢を叶えています。
そこに至るまでは井上さんの圧倒的な行動力と「何が何でもやり抜く」という強い気持ちで困難と向き合う姿勢がありました。

これまで常に自分の思いを形にすべく努力してきた井上さん。
海外で働く魅力を問われたとき、「まだ整っていないところが多い分可能性が広がっていて、夢が叶いやすい環境」と答えておられました。
ただ、それも類まれなる行動力と何もない状態からでも模索できる力強さがあったからこそ!

失敗なんてない!やりたいことなら一度挑戦しよう!

手掛けたカフェを閉店するなど、挑戦の過程で井上さんご自身も紆余曲折はたくさんご経験されていますが、この言葉で悩める人の背中を押したいそうです。

そんな井上さんが語る海外で働く魅力とは?
そして、1度目の失敗から学んだ、井上さんが事業をする上で大切に感じていることとは?

自ら道を切り拓き続けてきた井上さんの力強さも必見!
海外就職や海外での起業をご検討の方は是非ご一読下さい!

※本文中の一部お写真は井上さんから頂戴したものです。

 

井上翔太さんとは?

ベトナムの起業家 井上翔太さん

井上翔太さん プロフィール
豊田工業高専 環境都市工学科出身。高専在学中に留学で訪れたボリビアで起業に関心を持ち、ベトナムでその思いを強くする。ビジネスチャンスを模索していたところ、ベトナムでカフェ経営に挑戦できるチャンスを得て、高専を中退しベトナムへ渡る。以来5年間に渡り“QUEEN'S COFFEE JAPAN”というカフェをご自身で経営。2017年12月にカフェを閉店後はハノイで映像事業を手掛ける起業家として再始動し、現在に至る。*プロフィールは当日伺ったお話をもとに執筆。

 

ボリビア留学、いきなりベトナム起業・・・!?なんだかすごいご経歴!
元々海外にご関心があったのですか?

 

元々ずっと発展途上国に貢献したいという思いがありました。
中学生の頃、地球温暖化やオゾン層の破壊、水質汚染といった環境問題がよく話題になっていて。
そこに寄与・貢献したいという思いが強かったのですが、日本だと先進国で既に整っている部分も多く、僕が関われる部分がないように感じました。
発展途上国には未完成な部分もたくさんあり、自分が関わることで何か大きな変化を起こせるのではないかと漠然と思っていたんです。

ボリビア留学も発展途上国を見てみたいからという理由で決断しました。
国は正直どこでもよかったので、たまたま見ていたサッカーの試合の開催地だったボリビアが面白そうだと思ったからという理由でしたが(笑)。

 

すごい理由で留学先を選びましたね(笑)
ボリビアでの生活はどうでしたか?

 

すべてが新しい世界で、とにかく楽しい日々を過ごしました。
1年間滞在しましたが、日本人に一度も会わないような環境だったので、僕は現地の方にかなり珍しがられて・・・。
自然とみんな集まってきてくれたりしましたね。

ただ、最初は言葉の壁もあって大変な思いもしました。
ボリビアの方は英語が話せず、スペイン語で会話する必要があるんです。
その状況から必死に周囲と打ち解けて卒業式をみんなで迎え、代表として祝辞を読ませて頂けるようにまでなったという経験は本当に貴重な経験でした。

 

学生時代から貴重な経験をされてますね!

 

海外という広い世界に飛び出したことで、自分が自由だと強く感じました。
その上でいろいろ考えてみたとき、最高の仲間と最高の環境で自分が心から楽しめる仕事をしたいとふと思ったんです。
そして、それは自分で作るべきなんだと思い、起業を意識するようになりました。

ちょうど発展途上国で環境問題に貢献したいと思って高専の環境都市工学科に進学したものの、違和感を感じていた時期でもあって。

 

どんな違和感を感じていたのですか?

 

進学後にいろんな先輩のお話を聞いたのですが、公務員やゼネコンが主な進路だったので、やりたい分野と違って・・・。

それに、実際学んでみると、環境問題は自分の範疇ではどうにもならないことが多すぎるという思いも抱きました。
僕は幼い頃から人をまとめるリーダーになるのが大好きで、自分の力で何かを成し遂げたい思いが強かったんです。
なのに・・・環境問題は国レベルでないと動かせないことも多く、自分の貢献が実感しづらいように思いました。

 

チャンスを掴みベトナム起業!葛藤し続けた末に下した苦渋の決断とは?

ボリビアから戻り、自分の力で起業したいという思いを強く持ったという井上さん。
引き続き海外での挑戦を模索していたところ、ベトナムで送り出しの事業に携わったり、カラオケ店を経営している知人からベトナムは面白い国だから行ってみるよう勧められたと言います。
ちょうどその頃、大学の日本語講座で講師をしてみないかと知人から打診があり、ベトナムを訪れることに・・・。

 

タイミングよく訪れたベトナム行きのチャンス、ベトナムでの生活はどうでしたか?

 

現地で結局いろいろと模索することになりました(苦笑)。

まず、元々大学の日本語講座で日本語講師をするという話でベトナムへ渡ったのですが、実際に行ってみると教室はあるものの、生徒が誰もいなくて。
どうしようかと思っていたところ、知人が経営するカラオケ店のベトナム人スタッフの方々に日本語を教えることになったんです。
ただ、4ヶ月ほど経った頃にいろんな事情で辞めざるをえなくなってしまったんです。

 

なるほど。そこからどうやってベトナムで起業するに至ったんですか?

 

とにかく「どうしても自分の力で事業をしたい」という気持ちが強くて・・・。
ベトナムでビジネスチャンスを模索することにしました。

ちょうどその頃、地元名古屋でカフェを経営されている方からベトナムでカフェを経営しようと思っているというお話があったんです。
とりあえずなんでもいいから事業がしたかった僕は高専を中退し、出資を受け起業することになりました。
当時の僕には信念も全くなく、ただ自力で稼ぎたくて、ビジネスを成功させる自分がカッコいいと漠然と思っていたんですよね・・・(苦笑)。

 

実際に井上さんが経営されていたカフェ

実際に井上さんが経営されていたカフェ

 

いきなり起業されたので、いろいろと苦労もあったのではないですか?

 

いや〜枕が毎日濡れて乾かなかったぐらい大変でした・・・というのは冗談ですが(笑)。
学生時代はリーダーとして人をまとめるのが好きだったのですが、その気持ちがへし折られるかと思うぐらい大変でした。

まず、これまでアルバイトは塾講師しか経験しておらず、飲食店の経験はゼロ。
その上で、従業員マネジメントの難しさにも直面しました。
オープン初日にベトナム人スタッフ同士が大げんかを始めて、最終的には包丁を振り回す乱闘騒ぎになったときはもうダメだと思いました(苦笑)。
しかも、その2〜3週間後には日本語も話せて、信頼していたスタッフにお店のレシピやメニューをすべて持ち逃げされたりもして・・・。

 

かなり壮絶なスタートですね・・・(絶句)。

 

しかも、カフェ経営って利益が少なくて本当に儲からないんですよ。
カフェ経営だけでは続かないと思っていたので、本を作ったり、台湾かき氷の販売をしてみたり・・・いろんな事業に手を出しましたね。

また、人件費を削減するために、ベトナム語しか話せない方を従業員として採用し、1〜2年かけてベトナム語を必死に覚えました。
スタッフとも何度も対話を重ね、「どうすればよくなるか」をみんなで一緒に考え続けることで、なんとか閉店までの5年間を耐え忍んだ感じですね(苦笑)。

 

そんな苦しい状況の中、事業を続けられたのはなぜですか?

 

正直いつでも辞めていいと思っていましたが、そこは・・・プライドに尽きます。
高専を中退してベトナムへ渡るとき、周囲の友人には絶対に偉くなって帰って来ると言っていたので。
実際どんなに辛くても、上手く行くと信じ続けていましたしね。

それに、カフェ経営のかたわらいろいろな事業に手を出してみたものの、どれも自分にとってしっくり来なかったんです。
そうなると、辞めてしまったところで何もすることがなかったんですよね。

 

最終的になぜ閉店する決断をされたのですか?

 

ちょうど借りていた物件の契約の時期が来たのですが、その頃にいろんなことが重なりました。
お店のロゴが某社のロゴに似ていて訴訟沙汰になりそうだったり、設備もかなり古くなっていたり・・・。
それに、そもそも儲かっていなかったので、その状況でこれ以上従業員を抱え続けるのは苦しかったんですよね。
一人でもう一度一からやり直そうと思いました。

 

動画制作を手掛ける起業家として再始動!ベトナムで働く魅力とは?

お仕事中の様子

 

もう一度一から始めるにあたって、具体的にどんなことをしていたのですか?

 

カフェ経営をしていた頃から、よく趣味で動画を撮影してSNSに投稿したりしていたんですよ。
カフェを閉めた後、一眼レフカメラを買っていろんな動画をアップし続けていたんですね。
それがたまたま井上寛太さんの目に止まり、彼の経営するスクールの紹介動画を有料で作って欲しいという話になったんです。

 

すごい偶然!思わぬところからお仕事が舞い込んできたのですね!

 

寛太さんの依頼がきっかけで、大好きな動画制作で収入を得られる可能性に気付きました。
動画制作は僕の好きなことであり、好きでなければ情熱はかけられません。
次に事業を立ち上げるときには、圧倒的に情熱を掛けられることにしようと思っていたので、大好きな動画制作の世界で頑張っていくことにしました。

これはカフェ経営に失敗したときに得た気付きがもとになっていて・・・。
僕はただ「自分で事業がしたい」という一心で飛びついてカフェ事業を始めてしまいましたが、別にカフェやカフェの経営が好きだった訳ではありませんでした。
本当にカフェが好きで、コンセプトをやお客様に提供したい価値について真剣に考えていたら、成功していたのではないかという思いがあったんですよね。

 

一度失敗したからこそ得た気付きですよね!
ところで、井上寛太さんとはどのようにしてお知り合いに?

 

これは・・・僕がハノイで恩人だと常々申し上げている、ベトナム国立交響楽団の本名徹次先生のおかげです。
寛太さん以外にも、いろんなお仕事が本名先生のご紹介から始まっておりまして・・・。

本名徹次先生と井上翔太さん

恩人である本名徹次先生と井上さん

本名先生とはハノイ・カルティベート・トーククラブ(注)で先生がご登壇された際にお話を聞きにいったときに初めてお目にかかりました。
以来、カフェにもよくお越し頂きましたし、元々僕が吹奏楽部でフルートを演奏していたのですが、ベトナム国立交響楽団のフルート奏者の方が産休に入った際にお手伝いさせて頂くなど、今でも親しくさせて頂いておりまして。
寛太さんのことも本名先生がご紹介して下さったんですよね。

余談ですが・・・カフェを経営していると、いろんな方とお知り合いになる機会は多かったですね。

(注)ハノイ・カルティベート・トーククラブとは、主にベトナム・ハノイでご活躍されているクリエーターの方が日々の活動等をお話されていた場所。ハノイ・クリエイターズ・クラブが主催していた。(ハノイ・クリエイターズ・クラブの活動内容ページを参照。)

 

いろんな方と出会えるのが海外生活のいいところですよね!

 

そうなんです!
実は・・・今の映像事業についても営業は全くしていませんし、広告の打ち出しもしていないんですよ。
ハノイに日系で動画制作を行っている会社が少ないので、有難いことにお客様が次のお客様を紹介して下さるんです。

 

お仕事が紹介やご縁で繋がっていくのも海外ならではですね!
どのような動画を普段制作されているんですか?

 

特に下積みがあった訳ではないので、いろんなジャンルで制作していますよ!
事業・店舗紹介、企業様の記念式典等で使われるような沿革を振り返るような動画、イベントのアフタービデオ・・・など多岐に渡ります。
最近では、ベトナムのアイドルのプロデュースにも携わっているので、アイドルのミュージックビデオや楽曲制作も行っていますね。

 

現在のお仕事の楽しさややりがいはどんなところですか?

 

あらゆるモノやサービスが揃う日本とは違い、ベトナムにはまだまだ整っていない部分がたくさんあります。
だからこそ、まだまだ発展途上の僕でも貢献できる場所や活躍できる舞台がたくさんあること、でしょうか?
日本だと絶対にできないようことにも挑戦できますし、夢が叶いやすいと思うんです!

日本だと経験ゼロの僕がいきなりカメラマンとして生計を立てるのは難しいと思うんです。
現在ベトナム国立交響楽団の運営支援等もさせて頂いているのですが、日本でそういった委員会に入ることは難しいと思いますし・・・。

 

夢が叶いやすい、素敵ですね!
逆に、仕事における難しさや大変なことはありますか?

 

う〜ん、1回目に起業したときにいろいろ経験していますからね(苦笑)。

今はまた新しい事業を始めた訳なので、すべてが新しくて手探りで進めているというところはあります。
これに関しては、「できる」と思ってやり続けているところですね。

いろんな難しさはあると思いますが、情熱さえあればどんなことでも乗り越えられると思います。
カフェ経営時代も「自分で事業をしたい」という強い思いがあったからこそ、ベトナム語を必死で勉強して覚えていったという経緯もありますし。
「難しい」で止まってしまうとしたら、まだそこに熱が足りないのかなと思いますね。

とはいえ、僕ももう少し熱量を発揮していくべきだと思いつつ、ときどき自分自身のモチベーションをコントロールするのに正直なところ苦戦していたりもします(苦笑)。
どうしても作業は事務所で行っており、営業にも出ていないので、人と会って刺激を受ける機会が少なくて・・・。

 

気になる今後と海外で働きたい方へのメッセージ

「自分の力で事業をしたい」という強い思いで単身ベトナムへ渡り、自ら道を切り拓き続けた井上さん。
途中1度目の起業で上手くいかない時期もありましたが、「きっと上手くいく」と信じて歩みを止めなかったからこそ今があるのだと感じました。
失敗から得た、「圧倒的に情熱を注げる、好きな仕事をする」という気付きもすごく大切な気付きですよね!

そんな井上さんは今後についてどのようにお考えなのでしょうか?
海外で働きたい方へのメッセージと併せて伺ってきました!

 

ご自身の今後についてはどのようにお考えですか?

 

まず、再始動してから会社は妻と2人で経営している状態なので、いずれまた従業員を採用し、会社を大きくしたいという思いが強いです。
会社の規模が大きくなると、できることも増えますし、社会に与えられる影響も大きいですよね?
一人でただ動画を作っているだけだと僕は喜びを感じられないので、僕が作る動画や映像を通じて何か社会に影響を与えられるようでありたいと強く思っています。
それに、単純に一人で仕事をするよりも仲間がいた方が楽しいですしね!

あとは・・・圧倒的な熱量を持った人と出会って、一緒に仕事を通して何かを成し遂げたいですね。
動画は簡単にかつ低コストで多くの方に見て頂けるツールなので、そこに大きなことを成し遂げられる熱量と上手く掛け合わせられれば、社会に与えられる影響ももっと大きくなると思っているので。

 

海外で働きたい方へメッセージをお願いします!

 

海外で働いてみたいと思うなら、一度挑戦してみるといいと思っています。
もしダメなら、そのときは日本に帰るか別の道を探すかして軌道修正していくだけなんです。
当然紆余曲折はありましたが、僕は海外へ出てきてよかったと思っていますし、僕の周囲でも日本で働き続けていた頃よりもいいと思っている方がたくさんいます。
失敗なんてないし、失敗しても死ぬ訳ではないから大丈夫だということを僕自身の経験からも伝えたいですね。

それに・・・悩んで苦しくてどうにもならなくて、海外に来てみるのもいいんじゃないかなとも僕は思っていて。
今は僕自身もまた新しく事業を始めたばかりで難しいかもしれませんが、葛藤している方々を受け入れられるような人であれたらいいなと思っています。

 

まとめ

いかがでしたか?

「途上国に貢献したい」、「自分で事業をしたい」という強い思いを抱き、実際にボリビア留学やベトナムでビジネスチャンスを模索してみる行動力、本当に素晴らしいですよね。
当然上手くいかずに苦労をされた時期もありましたが、そこから得た「圧倒的に情熱を注げる好きな仕事を」という大切な気付きを得て、大好きな動画制作の事業で再スタートを切っておられます。
そんな井上さんだからこそ、「失敗なんてなくて、失敗しても死ぬ訳ではないから大丈夫!」という言葉を掛けられるんだと思っています。

また、井上さんがお話して下さったように、日本と比べて未完成の部分も多く、可能性がどんどん広がるところも海外で働く魅力です。
井上さんご自身の現在のお仕事からもその様子がたっぷり伝わったのではないでしょうか?
お仕事やハノイ生活を通じて多くの方に出会い、そのご縁を通じて新しいお仕事が生まれていくのもとても素敵ですよね!

取材中、周囲への感謝を忘れない謙虚な姿勢や優しさが感じられるエピソードをたくさんお聞かせ下さった井上さん。
その謙虚で前向きな姿勢こそが、井上さんがこれまで様々なご縁からチャンスを掴み取り、ここまで歩んで来られた秘訣なのだと思いました。

井上さん、この度は素敵なお話をお聞かせ頂きまして、本当にありがとうございました!
今後の益々のご活躍、並びに事業の益々のご発展を祈念しております。

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Jiyoung Baek

セブ留学がきっかけで東南アジアの虜に!! フィリピン・セブでの海外インターンを経て、ベトナム・ハノイで海外就職。約2年に渡って大好きな東南アジアで働きながら、旅をする生活をしていました。 現在は自身の海外経験を基に、旅するインタビュアーとして海外で活躍する方々を取材し、「海外で働くとは」について発信することで、海外で働きたいけど一歩踏み出せない方に挑戦のきっかけを作るべく奮闘中。 どんなときもアジアの眩しい陽射しのような笑顔を忘れず、頑張っています! 日々大事にしていること「やらない後悔よりやって後悔、何でもやってみる!」