「福島の人が福島を誇りに思える事業を」教育ビジネスでベトナム起業!女性社長二瓶彩菜さんの奮闘記
こんにちは!
BEYOND THE BORDER ライターのペクです!
突然ですが、皆さんは故郷の誇れるものや素晴らしさについて聞かれたら、どんなことを思い浮かべますか?
美しい景色、名産品、歴史的建造物、伝統工芸・・・きっといろんなものが浮かんでくることでしょう。
では、その素晴らしさをどのように社会に、そして世界に伝えていきたいですか?
今回お話を伺った二瓶彩菜(にへい あやな)さんが世界に伝えたいものは、故郷である福島で受けた素晴らしい教育。
自立心や主体性を育んでくれた福島での教育は二瓶さんの人生に大きな影響を与えたようです。
以来「子どもたちに世界を広げるきっかけを」という強い思いを胸に、数々の困難を乗り越え、現在はベトナムでアフタースクール事業を営む起業家としてご活躍されています。
そこに至る背景には逆境や困難にも負けず、自ら道を切り拓こうと力強く突き進む姿、そして故郷を思う強い気持ちがありました。
必要なのはお金でもスキルでもなくて、熱意と行動力!
最初から順風満帆な人生なんてなく、今前向きに進んでいるような人にも悩み、葛藤した時期が必ずある!
病で自殺を考えるほどの辛い時期を乗り越え、努力を重ねる過程でたくさんの素敵な出会いや学びがあり、そう強く思うようになったとのこと。
そんな風に周囲への感謝を忘れない謙虚さを持ち合わせながらも、前向きに力強く進む二瓶さんの姿に刺激を受ける方も多いはず。
海外就職・海外での起業をご検討の方はもちろん、心に灯った熱い思いをもとに挑戦しようとするすべての方へ届けたい記事。
是非ご一読下さい!
※本文中の一部お写真は二瓶さんご本人から頂戴したものです。
目次
二瓶彩菜さんとは?
大学卒業後の数年間は異業種で営業職として勤務。2012年に株式会社東急キッズベースキャンプへ入社し、小学生向けアフタースクールの店舗運営に携わる。2015年に退職し、フリーランスの幼児教室講師として活動。2018年3月に株式会社アジアエデュケーションラボを日本で、同年11月に100%子会社をベトナムで設立。自身の根底にある、故郷の福島で受けた素晴らしい教育を海外で伝え、福島の人々が福島を誇りに思える事業を作るべく、そしてテクノロジーを通じて子どもたちの生きる世界を広げるべく日々奮闘中。ープロフィール参考:株式会社アジアエデュケーションラボHP(なお、伺ったお話をもとに加筆しています。)
素晴らしい志!原点は故郷・福島の教育。
国内ならどこも同じ教育のように思えますが、何か特別な部分があったのですか?
私が生まれ育った三春町では、子どもたちの自立性や主体性を育てるような学校づくりを行おうとする教育改革の流れがありました。
小・中学生の時期に、校則やチャイムのない環境で自由には責任が伴うことを学んだり、修学旅行では1年がかりで沖縄の文化や戦争の歴史について調べ、宿泊施設も自分たちで手配し、現地の方に話を聞きに行くなど、自発的に行動できるような機会を沢山与えて頂きました。
とても素敵な取り組みですね!
私の実家は父が病気がちだったこともあり、非常に貧しくて・・・。
何か「やりたい!」と思っても親から激しく否定されたり、我慢を強いられることが多かったんですね。
そんな環境だったので、子どもの頃から自己肯定感が低く、周囲と比較しては「私は恵まれない子だ」と思って過ごしていました。
しかし、自立心が芽生えやすい母校の教育システムのおかげで、「自分の住む世界は自分次第で変えていける」という感覚を持てるようになったんです。
三春町の教育プログラムを通して二瓶さんが得た感覚、とても大切ですよね!
他には、青年海外協力隊の方やネイティブアメリカンの方、専門学校の生徒さん・・・といった外部講師の方々がお話をして下さる機会もあったんです。
公立校とは思えないですよね?
都心部と違って、入ってくる情報も外国人も少なく、当時インターネットがまだあまり身近ではない環境にもかかわらず、海外に目を向けるチャンスも与えて頂きました。
そのような中、発展途上国の子どもたちが飢餓や貧困に苦しんでいると知ったことで、自分より困っている子どもたちのためにできることが自分にもあるのでは? という思いを漠然と持ち、私の心に灯ったその思いこそが私の生きる希望でした。
長年秘めてきた思いの実現に向けて行動を続ける日々
「困っている子どもたちに携わるような仕事を」という思いはありつつ、元手なしでは始められないと思っていた二瓶さん。
家庭から一切の援助を受けずにアルバイトをしながら大学に進学、就職後も会社の一員として最大限の力を発揮すべく、自己研鑽に励むなど努力を重ねてきました。
当時は自立して収入を得られるようになったら、NPOやボランティア等を通じて子どもたちのために活動しようと思っていたそうです。
そんな二瓶さんを変えたのは・・・東日本大震災。
「後悔しない生き方をしたい!」と、自身の思いの実現へ向けてここから大きく動き出すことになります。
震災を機に、長年の夢を実現すべく動き出されたとのことですが、
具体的にどんな変化があったのでしょうか?
まず、異業種で営業職として勤務していたところからキャリアチェンジをしましたね。
子どもと直接触れ合うことで何か見えてくるかもしれないと、株式会社東急キッズベースキャンプへ入社し、小学生向けアフタースクールの運営に携わりました。
子どもたちと過ごす時間は本当に楽しく、天職とすら思いました。
しかしながら、「子どもを保育することだけが自分にできることなのだろうか? 自分だからこそできることがもっと他にあるのではないか?」という思いも徐々に湧いてくるようになったんです。
そこで、政治家や社会起業家を育成する、大前研一さん創設のNPO法人一新塾に通い始め、自分の根底にある志を徹底的に掘り下げていきました。
結果、自分の原点が福島で受けた教育だと気付いたんです。
いろいろ動いてみることで大事な原点を見つけたんですね!
また、様々な教育プログラムについて勉強する中で、オランダのイエナプランという教育プログラムが自分が受けてきた教育と似ていると気付きました。
そこで、実際にオランダへ行き、イエナプラン教育を導入している小学校やスティーブ・ジョブズ小学校など、オランダの教育現場を見て廻りました。
オランダまで行く行動力!熱意が伝わってきます!
このオランダで、今の私の事業に繋がる出来事が起こりました。
スティーブ・ジョブズ小学校を訪れたとき、iPadのアプリを使ってフランスの子どもたちと直接コミュニケーションを取りながら、フランスについて学ぶ子どもたちの姿を目にしたんです。
例えば、日本の学校で韓国や中国といった近隣諸国について勉強する場合は教科書から学ぶか、よくて日本に住む韓国・中国の方と交流する程度ですよね?
確かにそうですね・・・。
現代はテクノロジーの力を使って、いくらでも世界と交流できる時代。
なのに、子どもたちの世界は相変わらず家と学校の往復で、それ以外に自分の世界を広げる場所がないことに違和感を感じました。
私自身は決して裕福な家庭で育った訳でも、満足に習い事ができた訳でもありませんが、学校教育を通して世界を広げてもらうことができたんです。
そのおかげで、アルバイトを掛け持ちしながら自力で大学に進学し、夢や目標を実現できるような生き方ができました。
だとしたら・・・アジアの一員としてアジア諸国の子ども同士を繋げることで、子どもたちの世界を広げるきっかけを作っていきたいと思ったんです。
実際に行動を起こしたからこそ生まれた思いですね!
その後はどうしたんですか?(続きが気になってたまりません!笑)
日本に戻った私は、日本と繋げたいアジアの国について考えつつ、周囲の方々にお話を伺っていたところ、「ベトナムが面白い!」というお話を聞きました。
その後すぐに動き出した訳ではありませんが、ずっとそれが記憶に残っていて・・・。
有給を取ってベトナムへ行ってみようとふと思い立ち、ホーチミンとベンチェへ訪れることにしました。
このとき、生まれ育った故郷とよく似ていて、妙にホッとする安心感を覚えました。
特に、ホームステイをしたベンチェには水道もなく、雨水で顔を洗うような環境。
もちろん言葉も通じませんが、現地の方々は温かく受け入れてくれたんです。
おこがましいのですが・・・「この国の方々のためなら頑張れる」と思いました。
熱意と行動力で掴み取ったベトナム起業と試行錯誤の続く日々
ここでやっと日本と繋ぎたい国を見つけたんですね!
そこからすぐに今の事業を始めるべく動き出したのでしょうか?
まずはFacebook上で「ベトナム会」というグループの管理人を始めました。
日本での日常に戻ると、せっかくベトナムで抱いた思いを忘れてしまいそうだったので・・・。
このコミュニティで日本人とベトナム人の懇親会や日越間が抱える課題について議論するイベントなどを開催しながら、ベトナムへの理解を深めていきました。
まずはベトナムで抱いた思いを忘れないために行動されたんですね。
その後会社を退職し、フリーランスとして活動するかたわら、管理者をしているFacebookグループ「ベトナム会」で協力者を集め、ハノイとホーチミンでテストマーケティングを行いました。
その結果、北部のハノイの方が日本の教育に関心が高い方が多いと分かったんです。
当初はベトナム人の協力者の方と合弁で経営するか、外資系企業として立ち上げるかで悩みました。
ただ、合弁で経営するデメリットもあり・・・周囲に相談すると、出資を受けることも可能ではないかと言われたんです。
テストマーケティングの結果や自身の思いを投資家の方々にお話したところ、女性一人でベトナムで奮闘する姿を応援したいと思って下さったようで、出資を頂けることになりました。
その後も出資者が集まり、最終的に日本法人の100%子会社をベトナムで立ち上げることができました。
熱い思いとひたむきな努力が伝わったからこそやってきたチャンスですね!
ただ、事業内容については試行錯誤する日々が続きました。
当初は幼稚園の中で、放課後に教室を借りて体験型アフタースクールを運営したり、日系企業様にご協力を頂き、職業体験や農業体験といった課外活動を行っていました。。
そこから幼稚園の数を増やして、その店舗(幼稚園)どうしを繋ぐというサービスをアジア諸国で展開しようとしていました。
が、時間や約束を守ることなど、ローカルの幼稚園との意識の違いから難航してしまったんです(苦笑)。
また、「テクノロジーを通じて子どもたちを繋げたい」と思っていましたが、起業当初は子どもたちにデバイスを使わせたくないという親御さんも多くて・・・。
最近やっとその潮流も変わりつつあり、プログラミングスクールとして事業を形にすべく動き始めたところです。
困難はありながらも、さらなる夢の実現に向けて前向きに進む日々
現在の事業について教えて頂けますか?
ベトナム人のお子様向けに放課後のプログラミング教室を運営しています。
ただ、プログラミング技術を学ぶことを目的としているのではありません。
プログラミングを通して、論理力、問題解決力や答えのない問いについて考える力といった、ライフスキルを身につけることを目的としています。
様々なコースがありますが・・・最も生徒さんが多いコースは、絵本の世界をプログラミングで表現するコースです。
こちらについては、3、4才のお子様も楽しく取り組んでいますね。
子ども同士の協働体験を大切にしているので、プロジェクターを使ってみんなでひとつの世界を作り上げるような活動や、一人ひとりが作ったゲームを映し出し、みんなで遊ぶ活動を授業の中に取り入れています。
(補足:私も海にいろんな生き物を泳がせるプログラミングを体験させて頂きました!)
他には、プログラミングでロボットを動かすコースやScratch(子ども向けプログラミングの世界的権威)を用いたプログラミングのコースなどもあります。
現在のお仕事でどんなことにやりがいや楽しさを感じますか?
私のビジョンや志に多くの方が賛同し、関わって下さっていることが本当に有難く、嬉しいことです。
何の実績もない中で出資を頂けたことは、私にとって一つの自信にもなりました。
まだ大きな結果は残せていませんが、それでも多くの方に囲まれながら子どもたちの笑顔を作り出せているのは本当に幸せです!
これまでのお話を通じて、二瓶さんの楽しさ伝わってますよ!
逆に、大変なことや難しさはありますか?
どうしよう・・・たくさんあって何を答えていいか分かりません(笑)。
私たちの「当たり前」がベトナムの方々にとっての当たり前ではない、ということです。
何かをお願いする際、熱意をぶつけたら動くタイプばかりではありません。
どれだけロジカルに、「何のためにこの仕事をあなたにお願いしたいのか」を伝えられるかが大事で・・・世界共通言語は論理力だと感じています。
いろいろな難しさに直面していることが窺えます。
その困難すらも乗り越えようと頑張り続けられるのはなぜですか?
一番大きいのは「自分が決めた」という納得感、でしょうか?
私はベトナムで一儲けしようというよりは、ベトナムが好きで、「ベトナムの方々のためなら頑張れる」と思ってベトナムへ来ました。
誰かに決められた道なら心が折れたかもしれませんが、自分で選んだ道なので頑張れると思っています。
あとは・・・故郷の福島で受けてきた素晴らしい教育という、自分の原点がきちんとあることだと思っていて。
福島は東日本大震災を機に、誇れるものが減ってしまったと思うんですね。
そのうえ、福島で今日私がお話したような素晴らしい教育が行われていたことはあまり知られていません。
でも・・・その教育があったおかげで、ベトナムやアジアの子ども達の笑顔を作ることができたら、福島の誇りがまたひとつ増えるのではないかと思っているんです!
その思いがあるからこそ、嫌なことや辛いことがあっても楽しく前向きに進み続けられるんだと思います。
自分の核となる思いや原点があるから頑張れるんですね!
当然、自分の中にある強い思いだけではダメだったと思います。
幼少期、私は両親から否定されながら育ったというお話をしましたよね?
その代わり、私は周囲の他の方にはすごく恵まれていたんです。
高校時代にアルバイトをしながら塾の自習室に通っていた頃、お金がない私に対して「努力できるのは才能」と言って勉強できるスペースを貸してくれたり、質問を受け付けて下さった塾の先生。
まだ10代と若かった私を一人の人間として対等に扱い、「自分の気持ちを大切に」とアドバイスして下さった経営者の方・・・など。
出会った方々と様々なお話をする中で、世の中には素敵な方がたくさんいることに気付いたんです。
こんな素敵な方々がいる社会なら、私が頑張って行動すればきっと応援して下さる方は増えるだろうし、できることもどんどん増えていくと信じられるようになりました。
今まで二瓶さんが頑張ってこられた背景には多くの方々の応援があったんですね!
世の中のためになりたいと思っても、一人でできることは限られています。
私は今、投資家の方々から出資を受けて起業していますが、「お金」はもちろんですが「気持ち」を頂いていると思っています。
皆さんのお気持ちと応援を頂いているからこそ頑張りたい、それが私の原動力に繋がっています。
気になる今後と海外で働きたい方へのメッセージ
真っ直ぐな情熱とひたむきな頑張り、行動力で多くの人を巻き込み、これまで進んでこられた二瓶さん。
その背景にはご自身の核となる思い、そして応援して下さっている方々の期待に応えたいという思いがありました。
日々試行錯誤を繰り返しながら作り上げているスクールのプログラムも今後どんな風に展開していくのか・・・個人的にもすごく楽しみです。
そんな二瓶さんの気になる今後について、海外で働きたい方へのメッセージと併せて伺ってきました!
今後についてはどのようにお考えですか?
会社のビジョンにも掲げていますが、「アジア50億人の心の国境をボーダレスに」という理念の下、スクール事業を通して子どもたちの心の国境を外し、一人一人が自分の可能性を信じて人生を切り拓いていけるような社会を作っていきたいと思っています。
人はビジネスベースではなく、友情ベースで関係を育む方が、回り回って経済でも協力関係を育めると、ベトナムでの経験を通して感じています。
スクール事業を通してアジア諸国の子ども達が交流し、素敵な思い出を持って大人になれば、お互いの国に対する見方もきっと変わってくると思うし、アジアを一つの国として見て、行動できる人が増えると思っていて・・・。
そんな社会なら、幸せに、気持ちよく暮らせると思いませんか?
また、日本では北欧の教育を見習おうという風潮がありますが、次の100年は世界からアジアの教育が素晴らしいと言われるようにしていきたいと思っています。
その原点は福島の教育であり、それを私が発信し続けることで福島への見方も同時に変えていきたいですね。
最後に、海外で働きたいという方へメッセージをお願いします!
必要なのは・・・お金でもスキルでもなくて、熱意と行動力だと身を以て感じています。
自分にとって今惹き付けられる何か、胸の中に熱い想いがあるなら、それを信じて進んでみて下さい!
行動すれば必ず応援してくれる人がいるはずです。
また、今すごく活躍しているように見える人でも、どん底に落ちていた経験や踏み出せないでいた経験がきっとあると思うんです。
私自身もアルバイトをしながら大学に通っていた頃、追い込み過ぎてパニック障害とうつ病を発症し、自殺を考えた時期がありました。
周囲の方々に支えられ、その経験を乗り越えたおかげで今があると思っています。
最初から順風満帆な人なんていなくて、みんな苦しい時期を乗り越えて「今」があるんだということを伝えたいですね。
まとめ
いかがでしたか?
誰だって最初から順風満帆な訳ではなくて、情熱と行動で多くの人を巻き込み、応援を受けながら前に進むんだということが伝わるお話でしたね。
辛い幼少期や病気の経験を乗り越え、思いの実現に向かって力強く進む姿に、私自身とても感銘を受けました。
子ども達の教育に携わりたいという思い、故郷福島への思い・・・取材中に伺ったお話のすべてから二瓶さんの情熱が感じられ、引き込まれるようにお話を聞いていました。
最後にお話して下さった、「必要なのはお金でもスキルでもなく、熱意と行動力」という力強いメッセージも、熱意と行動力で多くの方々を巻き込んできた二瓶さんだからこそ語れるもの。
この記事を読んで、二瓶さんのように心の中に灯った熱い思いを実現させるべく、一歩踏み出す方がいらっしゃれば大変幸いです。
二瓶さん、この度は素敵なお話をお聞かせ頂きましてありがとうございました。
今後の事業の発展、二瓶さんのご活躍を心より祈念しております。
*今回ご紹介させて頂きました二瓶さんが運営するプログラミングスクールAnyhapi Tech Worldの様子についてはこちらのFacebookページを是非一度覗いてみて下さい!