「年齢なんて関係ない!」29歳でパラオに飛び込み、ダイビングインストラクターに転身した女性の軌跡
「年齢は関係なく、自分が”どれだけやりたいか”が大事」
今回お話を伺った、中嶋千尋(なかじま ちひろ)さんが次の誰かに送るエールです。
長年「海に関わる仕事がしたい!」と思い、イルカのトレーナーに憧れていた中嶋さんですが、その道は狭き門。
新卒の就職活動で真剣に悩んだ末、諦めきれない思いを抱えたまま、他に関心のあった住宅系専門商社に就職し、充実した日々を過ごしていました。
そんな中嶋さんが仕事以外で夢中になっていたのが、就職活動後にパラオで始めた、スキューバダイビング。
毎年パラオを訪れ、ダイビングを楽しむうちに、ダイビングインストラクターへの憧れが募っていったそうです。
本格的にダイビングインストラクターへの転身を考え始めたのは29歳の頃。
20代前半でダイビングインストラクターを始めることが一般的な中、果たして実現可能なのだろうかと悩んだという中嶋さん。
最終的に、「まずはチャレンジして判断しよう!」と単身パラオへ渡りました。
取材時、「あのとき一歩踏み出して、本当に良かった!」と心からの笑顔でお話された、中嶋さん。
今回はそんな中嶋さんに、以下の3点について、お話を伺いました。
- 悔いのない決断をするために大切なこととは?
- パラオで働くことで起きた、中嶋さんの変化とは?
- 中嶋さんが描く今後のキャリアとは?
悩んだ末に一歩踏み出し、充実した毎日を過ごす中嶋さんの姿から、チャレンジする大切さや勇気をきっと感じてもらえるはず。
ぜひ最後までお読みください!
*本文中のお写真はすべて、中嶋さんご本人からいただいたものです。
新卒で住宅系の専門商社に入社し、約8年間勤務。2015年にパラオに移住して以来、現在に至るまでダイビングショップ「cruise control palau」でダイビングインストラクターを務めている。
*当日伺ったお話をもとに執筆。
一度は諦めた「海」と関わる仕事に29歳で再チャレンジ!
── 現在ダイビングインストラクターをされている中嶋さん。ダイビングに関心を持ったきっかけについて教えていただけますか?
昔から海が好きで、幼い頃から大学まで水泳を続けていたこともあり、泳ぐのも大好きでした。
また、幼い頃に見たイルカショーの感動が忘れられず、イルカのトレーナーにずっと憧れていたんです。
そこから、海に関われる仕事を調べていくなかで、スキューバダイビングを知り、いつかチャレンジしてみたいと思っていました。
ちょうど大学4年の就職活動を終えた頃、私がダイビングに関心があると知っていたいとこが、パラオにダイビングに行かないかと誘ってくれたんです。
いとこは私よりも先に、パラオに潜りにきていたので・・・。
そのときに、ダイビングライセンス(※)を取ったのが、現在の勤務先である「cruise control palau」なんですよ!
※ダイビング講習を受けて発行されるカードの正式名称は「Cカード」ですが、一般的に「ライセンス」と言われることが多いため、本記事でも分かりやすいよう、「ダイビングライセンス」と表記しております。
── そのような背景があったんですね・・・! 新卒の就職活動では、なぜ住宅系の専門商社に入社されたのでしょうか?
じつは、新卒の就職活動では、もともと憧れを抱いていたイルカのトレーナーの道に進もうか、真剣に悩みました。
ただ、狭き門ということもあり、諦めきれない思いはありながらも、最終的に断念することにしたんです。
そこで、イルカのトレーナー以外で関心のあった、インテリアコーディネートや家づくりに携われる仕事に絞って就職活動に臨んだ結果、縁あって住宅系の専門商社に入社することになりました。
── 当時のお仕事について教えていただけますか?
内勤の事務職を経て、工務店や工務店向けに製品を卸している販売店を担当する、営業に携わっていました。
家を建てる方と直接お会いできる訳ではありませんが、自分が納めた製品で1軒の家ができあがっていくことに大きな喜びを感じていました。
また、職場の仲間にも恵まれ、楽しい時間を過ごしていました。
反面、取り扱う製品を製造するメーカーとお客様との間で板挟みになって、ストレスを感じてしまうこともあったんです・・・。
入社7年目頃から、「自分の好きなことで、もっと周りの人を前向きで幸せにできる仕事がしたい!」と強く思うようになり、転職を考えるようになりました。
── その思いがあって、ダイビングインストラクターに挑戦しようと思ったのでしょうか?
まさにそうですね・・・!
社会人生活が長くなるにつれ、年に1回パラオにダイビングをしに行くことを目標に、日々の仕事を一生懸命頑張っている自分がいることに気づきました。
30歳を目前にして、本当にこのままで良いのだろうかと思い始めたんです。
ちょうどその頃、ダイビングでパラオに行ったときのインストラクターの方を見ていて、大好きなダイビングを通して、自分自身も楽しみながら、周りの人も幸せにできるインストラクターの仕事にチャレンジしたいと思いました。
ただ、当時すでに29歳。
果たして、現実的に可能なのだろうかと、すごく不安だったんです。
実際、周りに相談したところ、かなり反対されましたし・・・。
── そこから、最終的に一歩踏み出せたのは何かきっかけがあったのでしょうか?
パラオでダイビングインストラクターをされている、ちょうど同い年だった方の一言に背中を押されました。
ダイビングを仕事にしたいと思ったときに、「ダイビングが仕事って素敵ですよね、羨ましいです」とお話すると、その方に「チャレンジすればいいじゃないですか!できますよ!」と言われました。
その一言で、それまで頭で考え過ぎていたことに気づいたんです。
また、ダイビングインストラクターになるにあたって、気になる点はかなり調べました。
ダイビング業界は、ほとんどが20代前半から、早ければ専門学校を出て18歳や19歳からインストラクターを始めることがほとんどで、29歳でのチャレンジは遅いのが正直なところ。
そもそも体力的に可能なのか、将来的にきちんと生計を立てられるのか・・・など、インターネットだけではなく、親しいインストラクターの方にもメールで相談していました。
最終的に、年上のインストラクターの方に、「自分でまずやってみて、できると思ったらやればいい!」と言っていただいたこともあり、私自身も一度チャレンジしてから判断しようと思い、一歩踏み出すことにしました。
── ダイビングインストラクターに転身するにあたって、パラオ以外の国は考えなかったのでしょうか?
他の国でチャレンジする選択肢はありませんでした。
日本ではいくつか潜りにいった地域もありましたが、海外ではパラオでしか潜ったことがなかったんです。
もちろん、日本の海もすごく綺麗ですが、パラオの海はそれをはるかに上回る美しさでした。
ダイビングインストラクターになるなら、自分がその美しさの虜になったパラオの海が良いと思っていたんです。
ダイビングで何度かパラオを訪れるうちに、パラオで生活しても問題なさそうだという感覚もありましたし・・・!
「思いきってパラオに来てよかった!」そう言いきれる中嶋さんの今に迫る!
現在の会社には、大学4年の頃にダイビングライセンスを取得して以来、ずっとお世話になっていたという中嶋さん。
転職にあたって相談していたところ、まずは3ヶ月間の研修生として採用されました。
研修期間を経て、引き続きパラオに残る決心をした中嶋さんは、一旦日本でダイビングインストラクターのライセンスを取得した後、2015年9月から現職でご活躍されています。
── 現在のお仕事について教えていただけますか?
ダイビングガイドとして、ダイビングを楽しみたいお客様を海にお連れし、潜るポイントを先頭に立ってご案内しています。
お客様の安全を確保するのはもちろんですが、そのポイントの見どころや特徴、見られるお魚や豆知識、潜り方のアドバイスも潜る前に説明します。
カメラをお持ちのお客様には、撮影時の設定や構図についてアドバイスしたりもしていますね・・・!
潜る前にしっかり説明しておくことで、実際に潜っている最中もお客様に注目していただけますし、楽しさが全然違ってくるので、お客様とのコミュニケーションを大切にしています。
また、ダイビングライセンスを取得したいお客様向けに講習を行い、ライセンスを発行する仕事も行っています。
── お仕事で英語を使う機会はあるのでしょうか?
通常であれば、8割ぐらいが日本人のお客様なので、日本語での業務が中心ではあります。
ただ、パラオの公用語は英語で、パラオ人とは英語でのコミュニケーションが可能です。
弊社には、ダイビングポイントまでのボートの運転やダイビングガイドを担当するパラオ人スタッフ、ボートの保守点検やショップの修繕などを担当するフィリピン人スタッフがいます。
彼らと業務上連携が必要な際は、英語でコミュニケーションを取っています。
最近は、新型コロナウイルスの影響で、日本のお客様がパラオに渡航できないので、パラオ在住の他国のお客様が増えていることもあり、以前より英語を使う機会が増えていたりもします。
── お仕事のやりがいについて教えていただけますか?
お客様を海へご案内して、楽しんでいただけている様子を目にしたときがとても幸せです。
水中にいても、マスク越しにお客様が笑顔になる瞬間って分かるんです・・・!
また、一緒に海の中での感動を分かち合えるありがたさや喜びも、お客様と潜る機会が少なくなってしまった今、改めて感じています。
また、パラオには初心者の方には潜れないポイントもあります。
そのポイントで潜れるよう、日本各地で何度も潜りながら練習を重ねている方もいらっしゃったりするんです。
お客様がパラオでダイビングライセンスを取得した後も、継続的に頑張っている姿を見たり、どんどん上達している様子を見ると、すごく嬉しくなります。
── 逆に、大変なことはありますか?
先程もお話した通り、最近は新型コロナウイルスの影響で、パラオ在住の他国のお客様が増えたことによる難しさを感じています。
日本人と他国の方では、ダイビングスタイルに少しギャップがあるため、お客様の望むスタイルを掴む必要があるんです。
お客様とのコミュニケーションを大切にすることはもちろん、いつでも来れる方たちだからこそ、潜るポイントやツアー内容を変えてみるなど、新しい試みも取り入れながら、少しでも楽しんでいただけるよう、工夫を重ねているところです。
また、最初の1年ぐらいは、しっかりとした安全管理とお客様を楽しませることの両立がなかなかできず、インストラクターに不向きなのではないかと、よく悩みました。
当時は自分のどこが足りていないのか、どこが掴みきれていないのかも分からず、先輩に後ろについてもらい、ガイドを見ていただいた後の振り返りが毎回すごくツラかったです・・・。
当時があってこその今であり、温かく見守りながら指導してくださった先輩や、お互いに悩みを共有しながら切磋琢磨してきた同期にすごく感謝しています。
── パラオに来て良かったことについて教えていただけますか?
パラオ自体が人口約2万人の小さな島で、困ったらお互いに助け合う雰囲気があり、居心地の良さや温かさを感じています。
日本人コミュニティの繋がりも濃く、自然と新しい友人が増えていく感覚も楽しいです。
パラオに来なければ出会えなかった方との出会いを通して、価値観や視野も広がりました。
また、パラオに来てから、何事も柔軟に考えられるようになりました。
日本にいた頃は、「〜でなければならない」と思ってしまいがちでしたが、パラオでは、思った通りに行かないことの方が多いものです。
海という自然相手のお仕事なので、自分の力ではどうにもならないこともたくさんあります。
どうしようもない状況にぶち当たったとき、その状況でできることを考え、どうすれば事態を打開できるか考えられるようになったのは、大きな成果だと思います。
周りから反対されたりもしましたが、あのとき一歩踏み出して、本当に良かったですね・・・!
気になる今後と海外で働きたい方へのメッセージ
── そう言いきれるところが、とても素敵ですね! 今後についてはどのようにお考えでしょうか?
引き続き、パラオでダイビングインストラクターとして活動したいと思っています。
5年経った今でも、パラオの海は自分の知らない一面や魅力を見せてくれるので、もっと深くパラオの海を知りたいです。
ダイビングインストラクターとしては、5年目だとまだまだこれからです。
もっと知識や経験を身につけ、いずれは私を指導してくれた先輩のように、しっかりと後輩を育てあげられるようになりたいと思っています。
そうすることで、大好きなパラオの海の素晴らしさを伝え続けることはもちろん、パラオのダイビング業界を盛り上げ、今後もずっと最高の状態でお客様をお迎えし続けたいですね・・・!
── 最後に、これから海外で働きたい方にメッセージをお願いします!
大事なことは「自分がどれだけやりたいか」だと思います。
私自身、チャレンジしないことで、本当に後悔しないかを何度も自分に問いかけました。
一歩踏み出す前は、29歳という年齢が気になった時期もありましたが、今振り返ると、年齢はあまり関係ないと思っています。
逆に、迷っている時間がもったいないので、少しでも「やりたい!」という気持ちがあるなら、チャレンジしてほしいですね。
ただ、イメージだけで行動してしまうと、理想と現実のギャップに苦しむことにもなりかねません。
きちんと情報収集を怠らず、覚悟を持って飛び込んだ方が良いと思っています。
中嶋さん、この度は貴重なお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございました!
今後のご活躍、心より応援しております。