シンガポール政治状況
1.シンガポールの近代史概要
(第二次世界大戦後にイギリスと降伏交渉を行う日本の将校(Wikipediaより))
シンガポールはイギリス・日本の植民地としての支配を受けた後、第二次世界大戦後1965年にマレーシア連邦から分離独立したという歴史を持ちます。マレー人が多いマレーシアと華人が多いシンガポールの軋轢を収集できなくなったため、マレーシアから追放される形で都市国家として分離独立しました。そのため法律制定、軍備、国際関係の面でイギリスの影響を色濃く受けている一方、日本とも現在は良好な関係を維持しています。またマレーシアとは時折領土問題や外交問題で衝突するものの経済的には密接につながっており、その関係は複雑なものになっています。
2.事実上の一党独裁(優位)体制
シンガポールは建国以来、人民行動党が議会の議席の大部分を占める事実上の一党独裁体制を採っています。人民行動党以外の政党も認められていますが、選挙妨害や与党有利に選挙区を変更することは日常茶飯事で、野党を選出した選挙区は徴税面や開発といった分野で懲罰的な差別を受けることもあります。また言論、政治集会についても厳しく統制され、刑事罰の適用もあります。各国のメディアに与えられる報道の自由度を表す2014年度の報道の自由度ランキングでは180カ国中「150位」と不名誉なランキングに名を連ねています。ただ汚職については他の途上国と比べて少なく、クリーンな政治が行われているとされています。このような政治状況から「明るい北朝鮮」と呼ばれることもあります。
3.近年の政治状況
2011年総選挙、2012年補欠選挙とめったに負けることがなかった与党が集団選挙区で敗れるなど必ずしも与党の勢力が盤石ではないことが露呈しました。特に2012年補欠選挙では国内労働者の保護を唱い外国人の受入抑制を主張した労働者党が勝利したことから、国内の意見を考慮し、外国人のビザ要件も年々厳しくなっています。
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4.軍事
シンガポールは徴兵制は敷いており、17歳より2年間は軍に配属され、各種訓練及び軍事に関するサービスに従事します。徴募兵の数は5万5千人にのぼり、兵役終了後も13年間の予備役につちます。この予備役人員数も約22万5千人に達しているため、小規模な都市国家でありながらも必要な軍備は備えています。また軍事兵器についても豊富な軍事予算を背景に最新鋭のものを揃えており、有事に機動的に対応できる能力を備えています。軍事関連支出のGDPに占める割合は20%程度になっています。
5.国際関係
(対日関係)
日本とシンガポールの関係は概ね良好であり、日本はシンガポールにとって第6位(2010年)の貿易相手国となっており、シンガポールは日本の第3位(2010年)の直接投資国になっています。また日本法人の進出企業数は700社を超え、在留邦人も26,000名を超えています。
(対欧米関係)
上記の表からもわかる通り、シンガポールには欧米企業のヘッドクォーターやアジア統括会社が多く進出しており、シンガポールへの直接投資の金額は日本を大きく超えています。このような密接な経済関係を背景に良好な外交関係を維持しています。
(対マレーシア関係)
かつてマレーシアから分離独立した経緯と国境を挟んでの隣国である関係上、経済・政治・軍事の各方面で密接な関係を持ちます。しかし、シンガポールの投資、貿易上の密な関係から欧米各国におもねるような外交姿勢が見えることもあり、しばしばイスラム国家であるマレーシアと外交上の緊張することがあります。ただし武力衝突に至るまで関係が悪化したことはこれまでない。