シンガポールの就職・転職で求められる職種・求人状況
1.シンガポールの就職・転職状況概要
シンガポールはアジアの金融センターとして、また貿易の拠点として、さらにはグローバル企業のヘッドクォーター(本社)の所在地として発展しています。また意外に思われるかもしれませんが、工業国として顔も持ち、エレクトロニクス産業、航空関連、バイオ・医薬品・医療関連などの産業も非常に盛んで輸出産業となっています。さらに観光立国としても力を入れており、ロンドン、パリ、バンコクに次いで、世界で4番目に外国人旅行者が多く訪れる都市でもあります。
直近7年間でGDPが2.2倍と非常に大きく成長しています。一人当たりGDPが日本を既に超えている状況の中(下記グラフ参照)、既に先進国であるにもかかわらずこの成長率を維持しているのは希有な国であると言えます。
このような状況の中、日本人のシンガポールでの転職は他のアジア諸国と比べて敷居が高いものになっています。その要因の一つは高いレベルでの英語でのコミュニケーション能力です。シンガポールでは基本的にすべての業務が英語で行われており、ビジネスレベルの英語力が必要になります。また英語力だけではなく、ビジネスパーソンとしての専門知識といった業務遂行能力も高いものが求められます。逆にこれらの2つを一定レベルで持っている方にとっては非常にビジネスがやり易い環境が整っています。
2.求められる業種及び職種
シンガポールの主な産業は「1.シンガポールの就職・転職状況概要」もしくは「シンガポール経済状況」で述べた通り、工業(バイオ・医療、精密機器、輸送機械などのハイテク産業)及びサービス産業です。サービス産業の中身は金融サービス、小売業、IT関連、外食産業から成っており、求められる日本人もこれらの産業の中での営業職や営業サポート及び技術職になります。またグローバル企業のヘッドオフィスの経理などの管理部門(日本担当)としての求人もあり、幅広い業種及び職種だけではなく、入社後の社内でのポジションも幅広くなっています。一番多い職種は日本企業に対する営業職になります。当然ハイクラス人材として採用されるには前述の①英語でのコミュニケーション能力と②プロフェッショナルとしての高い専門性が求められますが、一旦採用された場合の報酬も非常に高くなっています。採用後も厳しく結果を残すことが求められるため、シビアな環境の中で自身を高めていけるような仕事をしたい方にオススメです。いくつかの日系の人材紹介会社を訪問してお話を伺いましたが、企業からの求人数は変化なしかやや減っている一方、求職者数は増えていっている状況で、求職者側からみると競争が激しくなっている状況です。
3.求められる語学力・コミュニケーション能力
一部の技術系の職種を除いてかなり高度な英語でのコミュニケーション能力が求められます。コミュニケーション能力は必ずしもTOEICのスコアで測れるものではありませんが、多くの職種で最低でも800点以上のスコアレベルの英語力が求められます。また日系の企業でも面接は英語と日本語の両方で行われるケースが多く、英語力だけではなく日本人のビジネスパーソンとしての日本語での業務遂行能力も厳しく問われます。この点についてはなかなか対策がとりにくいかと思いますので普段からの日本での業務で培っていく必要があります。
4.シンガポールの就職・転職・求人についてリサーチした所感
まず入社時のハードルは他のアジア諸国と比べてかなり高いと感じました。①英語力②職務遂行能力の2つの敷居が高いということと、「シンガポール就職・転職における労働条件及びビザの発給条件」でも記載しました通り、年々ビザの発給要件が厳しくなっており、シンガポール側の企業も日本人を雇いにくくなってきています。また入社後の生き残りも厳しくなってきているようです。ある人材エージェントにお話によると企業の人材を見る目は厳しく「デッドorアライブ(生きるか死ぬか)」的に成績下位20%の人については翌年契約を行わない企業もあるそうです。このような環境でサバイブしていくのは厳しいですが、頑張らざるを得ない環境で切磋琢磨していくことは、人材としての市場価格を上げる意味では非常に素晴らしいと思います。またシンガポールは仕事が出来る人にとっては成果と報酬の関係がフェアであるため非常にビジネスをし易い環境だと思います。ただ、全ての企業が厳しいというわけではなく、今回の訪問でインタビューさせていただいた現地採用の方の中には英語力もさほどでもないケースの方もいらっしゃいました。彼の場合は日系の建設会社でCADを使って製図をする仕事についていましたが、まだ見習いという状況でも伸び伸びと仕事をされていました。幅広い業種や職種、ポジションから自分のやりたいことを見つけられるという意味でもシンガポール就職は魅力的だと思いました。