「若い方のキャリア支援に携わりたい!」を原動力に、インドの人材紹介会社に就職した森井さんのストーリー
「自分の人生における目標から逆算し、“どう在りたいか”を軸にキャリアを選んでほしい」
そうお話されたのは、インドの人材紹介会社でコンサルタントとして勤務する、森井恵理(もりい えり)さん。
これまで一貫して「若い方のキャリア支援に携わりたい」という軸で、キャリアを切り拓いてこられました。
結婚後に単身でインドに移住し、さまざまな経験をする中で、「思っていた以上に、私たち一人ひとりが持っている可能性は大きい」と気づいた森井さん。
だからこそ、キャリア選択において将来のライフイベントを不安に思わず、一歩踏みだしてほしいとエールを送っておられます。
今回は森井さんに、以下の3点についてお話を伺いました。
- これまで森井さんがどのようにキャリアを選んできたのか
- インドでチャレンジした経験が、森井さんにどのような変化や気づきをもたらしたのか
- インド就職のどこに魅力を感じているのか
キャリア選択の参考になることはもちろん、自分の軸に従って、まっすぐに進む森井さんの姿からきっとたくさんの勇気をもらえるはず。
ぜひ最後までお読みください!
*本文中の一部お写真は、森井さんご本人からいただいたものです。
岡山大学を卒業後、岡山大学に事務職員として入職。入職後2年目には、文部科学省の「国際教育交流担当職員長期研修プログラム」(2年間)に参加。うち1年間はインターンシップなどのため、アメリカで過ごす。帰国後に岡山大学の国際部門で約3年間勤務した後、インド移住を決意。インド系の不動産会社にて日本人向けの営業担当として約1年半勤務した後、2019年1月に人材紹介会社“Miraist Private Limited”へ転職。同社で、インドにおける日系企業の採用支援と人事コンサルティングサービスの営業を担当しながら、日本でのインド人エンジニア採用支援にも携わるなど、多岐に渡って活躍されている。
(本記事は、2020年2月の取材時点での内容です。森井さんは、2020年7月から日本のハローワークで、大学生のキャリア支援に携わっておられます。)
*当日伺ったお話と過去の取材記事をもとに執筆。
目次
人生の軸「若い人のキャリア支援に携わりたい」を実現するため、インド就職を決意!
── 日本で大学職員としてキャリアをスタートし、インドで不動産会社を経て人材紹介会社へ。とてもユニークなキャリアですね!
幼い頃に通った英会話教室で、異文化に触れ、外国人の先生と英語で話す楽しさを覚えたことから、「海外」や「英語」にずっと関心がありました。
それからずっと、授業以外にも自分から洋楽や海外ドラマを通して英語に触れながら、日本で英語を勉強しつづけていました。
ファーストキャリアとして選んだ大学でも、最初はまったく別の部門に配属されましたが、たまたま知って応募した、文部科学省の「国際教育交流担当職員長期研修プログラム」に2年間参加した後、大学の国際部門で勤務することになったんです。
当時は、大学どうしの架け橋となって国際交流を推進しながら、留学を希望する学生を支援していました。
協定校を増やす活動や短期語学研修プログラムの充実化、学生それぞれの志向にあった留学・インターンシップ先の紹介や奨学金取得のサポートなど、業務は多岐に渡っていました。
特に、留学を希望する学生と1対1で向き合う仕事は、学生たちのキャリアの選択肢を広げられている実感があり、大きなやりがいを感じていました。
── 充実した毎日を過ごされていたんですね! それなのに、なぜ、退職する決意をしたのでしょうか?
3年目を迎えた頃、もともと抱いていた「若い人のキャリア支援に携わりたい」という人生の軸に立ちかえる機会があったんです。
働き方が多様化し、選択肢も増えているからこそ、早いうちから人生の軸や本当にやりたいことを見つけ、自分らしい人生を送ってほしいとずっと思っていて・・・!
最初に大学職員を志したのも、母校で学生の進路選択をサポートしたかったからでした。
その上で、思いの実現に向けて、長期的に何をすべきかを探し出すために、相談者の立場とアドバイスする私の立場から、必要になる経験やスキルを考えてみたんです。
もし、自分が誰かにキャリアの相談をするなら、大学でしか働いていない人よりも、さまざまな業種・職種を経験した人に話を聞きたいと思うはずです。
そして、相談を受ける私自身は、自分の経験から培われた価値観をもとにしかアドバイスができません。
より多様な視点からアドバイスができるよう、今の環境を離れ、もっと自分の視野を広げる必要性を感じたんです。
── 国内で民間企業へ転職する選択肢もある中、なぜ海外に目を向けたのでしょうか?
「海外に行くなら、今しかない!」と思ったからです。
転職を決断した当時、私は既に結婚して、夫がいました。
お互いの仕事の兼ね合いで、離れて暮らしていましたが、いずれは一緒に生活する方向で考えていたんです。
一方で、私はもともと「海外」や「英語」に馴染みがあり、いつかは海外で挑戦したいと思っていました。
二人のライフプランから逆算して考えると、私たち夫婦が別々の場所で働く時間はとても少ない・・・。
であれば、国も業界も職種もすべて変えて、新しいことにどんどん挑戦し、得られるものをすべて吸収しようと思ったんです。
── 覚悟の大きさが伝わってきました。そこで、インドを選んだ理由を教えていただけますか?
ビジネス英語を身につけたいと思っていたので、英語圏を前提として考えていました。
その上で、文部科学省の研修プログラムで1年間アメリカにもいたので、アメリカや他の欧米諸国を視野に入れた時期もありました。
ただ、限られた時間の中で挑戦しきることを考えたとき、自分の世界観を大きく広げるために、選択肢にないようなところを選んだ方が良いと思ったんです。
いろいろな国を見るうちに、英語が準公用語でもある、インドに関心を持つようになりました。
── 最終的に、何がインド就職の決め手となったのでしょうか?
やる気と能力次第で成長できる、ポテンシャルの高さに魅力を感じました。
他国と比べて、インドは未経験・第二新卒でも、自分次第で裁量の大きな仕事にチャレンジできる求人が多かったんです。
また、島国である日本では、多くの方が日本語を話し、比較的似たような価値観に触れることの方が多いと思います。
一方、「人種のるつぼ」と言われるインドでは、多様なバックグラウンドの人たちが共存しています。
今までとは違う価値観に触れることで、今後の世界を生きぬくヒントが得られるのではないかと思ったんです。
最終的に踏みださずに後悔するのが嫌で、一度もインドには行かないまま、インドで働く決意をしました。
ただ、これから挑戦する方には、決断する前に一度足を運んでみられることをおすすめします(笑)!
いざインドへ!“常に変化する”インドの面白みが感じられる、中身の濃い毎日を過ごす
── インド就職における会社選びの軸について教えていただけますか?
業界は不動産業と人材業を中心に考えていました。
将来的に若い人のキャリア支援に携わるにあたって、業界を問わず、幅広い人脈を築き上げられる仕事の方が自分の糧になると思ったからです。
また、日系企業ではなく、外資系企業か現地企業で挑戦したいとも思っていました。
せっかく海外で働くので、日本とは違う世界をとことん見てみたかったんです。
最終的に、縁あってインド系不動産会社に就職することになりました。
── 当時はどのようなお仕事をされていたのでしょうか?
日本人向けの営業担当として、日本人駐在員や日系企業を対象にした営業とカスタマーサポートに携わっていました。
営業活動では、日本人駐在員や日系企業に対して、自社が取り扱う住居やオフィス物件、あるいは自社が運営するサービスアパートメントをご紹介していました。
また、すでに他社と契約している方に対して、自社のサービスアパートメントに切り替えていただけるよう、提案営業も行っていました。
カスタマーサポート業務では、自社のサービスをご利用のお客様にトラブルがあった場合、インド人スタッフと連携しながら解決を図っていました。
── 営業活動とカスタマーサポートを同時に担当! 大変なことも多かったのではないでしょうか?
最初は大変でしたね・・・。
特に、インド人スタッフとの関係構築には苦労しました。
当時の私は「何かひとつ伝えれば、あとはすべて理解してくれる」という日本人のマインドで仕事をしようとしていたんです。
その点インドでは、会社との雇用契約の段階で業務内容が明確に決まっており、働き方や仕事に対する考え方も日本とは違います。
インド人スタッフとのミスコミュニケーションが続き、葛藤することもよくありました。
考え方の違いに気づいてからは、対面やメールでなるだけ具体的に、自分の意図を伝える努力をしました。
3ヶ月ほど対話を重ねていると、だんだん私の意図を汲みとってくれるようにもなり、スムーズに仕事が進むようになってきました。
── 最初は考え方の違いに苦労されたんですね。生活面ではどうでしたか?
じつは、もっと厳しい環境を想像していたので、いい意味で驚きました(笑)。
今も感じることはありますが、インフラが整っていないことによるストレスはありました。
デリー近郊の夏は50度近くまで気温が上がり、冷房が必須ですが、停電が定期的に起こります。
天候によってインターネットが繋がりにくいことや、車がないと買い物に行けないことが不便でもありました。
生活面でも日本の基準で考えず、インドの基準に合わせることが大切ですよね・・・!
── そうですよね・・・! では、どこにインドで働く魅力を感じたのでしょうか?
ビジネスのみならず、生活や街の様子も含め、インドには“常に変化する”面白みがあります。
今いるグルガオンの街並みも、私が来た2年半前と比べて大きく変わりました。
外部環境も大きく変わる中でどんどん新しいことに挑戦し、日本ではできない経験を積むことで、とても中身の濃い時間を過ごしました。
もちろんトラブルや苦労もありましたが、それを乗りこえる過程で問題解決能力が身につくなど、大きく成長したと思います。
経営者の方とお仕事をする機会も多く、以前より経営者に近い視座で考えようとする姿勢も身につきました。
こういったチャレンジを繰り返しながら、イキイキと働ける環境に身を置くことができて、毎日がとにかく楽しかったんです!
人材コンサルタントとしてインドで働く「今」と肌で感じるインド就職の可能性
── どのような経緯で現職に就いたのでしょうか?
じつは、もともと1社で思い残すことなく挑戦したら、日本へ戻る予定でいました。
そのあとは、人材業界へのキャリアチェンジを視野に入れていました。
企業の採用支援を通して採用背景を理解することや、キャリアアドバイザーとして求職者と向き合う経験を積むこと。
いずれも、将来的に若い人のキャリア支援に携わる中できっと活きると思っていました。
そんな折、弊社代表の関野と出会い、その思いを知ることになったんです。
関野はもともと大手企業の駐在員としてインドに赴任し、日本では気づけなかった、インドビジネスの面白みに気づき、既得権益を捨てて起業しています。
「インドでの経験はきっとこれから活きる! もっと多くの日本人にインドで働く魅力を知ってほしい!」
そう熱く語る関野のビジョンに、インドで働く面白みを感じていた私自身も、強く共感する部分がありました。
そこで、現職の人材紹介会社Miraistへ転職し、もう少しインドで頑張る決意をしました。
── 現在のお仕事について教えていただけますか?
インドで日系企業の採用支援に携わりながら、弊社が展開する人事コンサルティングサービスの営業を担当しています。
また、社内のインド人リクルーターと連携しながら、日本のIT企業に対して、インド人エンジニアの採用支援も進めています。
── お仕事のやりがいについて教えていただけますか?
インド人エンジニアの採用支援はハードルが高い分、やりがいも大きいと感じています。
日系の人材紹介会社なので、日本人のキャリア支援を前提として入社しましたが、期せずしてインド人エンジニアの採用支援に携われたことで、国を超えてキャリアの選択肢を広げられる面白さにも気づけました。
インド人エンジニアは言語習得能力が高く、飲み込みも速いので、日本でも活躍するポテンシャルは十分あります。
一方、日本でインド人エンジニアの受け入れ実績はまだ少なく、受け入れにくいというイメージを持たれている企業も多いのが現状です。
そのような中、採用支援をした顧客企業の方から、ご紹介したエンジニアが活躍していると伺ったときは大きな喜びを感じています。
── 逆に、難しさはありますか?
まだまだインド人エンジニアと、受け入れ先となる日系企業様の期待値調整には難しさを感じています。
インドでは転職を繰り返しながら市場価値や専門性を高めることが一般的で、自分主体でキャリアを考える方が多いんです。
ただ、入社後に長期的に活躍するためには企業ミッションと連動して、キャリアを考えることが不可欠です。
一方日本では、企業と社員の主従関係がまだ強く、一人ひとりの業務内容は多岐に渡ります。
お互いの違いを踏まえた採用活動ができるよう、弊社インド人リクルーターやお客様の双方に、それぞれの背景を丁寧に説明しながら向きあっています。
── いろいろ大変なこともあると思いますが、森井さんがインドで頑張る原動力について教えていただけますか?
夫をはじめ、日本で応援してくれている家族の存在が大きいです。
また、インドで出会ったみなさんのおかげでもあります。
インドはまだ日本人も少なく、「タフな環境だからこそ、みんなで一緒に乗りこえよう!」という雰囲気があります。
さまざまなバックグラウンドをお持ちの方と出会える機会も多く、これまでとは違った生き方にたくさん触れてきました。
みなさんから得た気づきが自分の糧となり、可能性も大きく広がったと思います。
現地採用の場合、次のキャリアに悩む方も多いと思います。
その点、多様な経歴を持った方々のお話を踏まえながら、今後について考えられるところはインド就職の良さだと思っています。
気になる今後と海外で働きたい方へのメッセージ
── 節目ごとに人生の軸に立ちかえって、キャリアを考える姿が印象的なお話でした。今後についてはどのようにお考えですか?
「若い人のキャリア支援に携わる」というライフミッションを実現したいと思っています。
ただ、その実現手段は複数あると思っているので、まだまだ自分の可能性を広げながら模索しようと思っています。
じつは、7月から「若い人のキャリア支援に携わりたい」という軸により近づけるよう、日本のハローワークで、大学生のキャリア支援に特化してサポートすることが決まっています。
インドでの経験を踏まえ、幅広い視点からアドバイスをしながら、自身の専門性もより高めていきたいと思っています。
人材市場で希少価値の高い人材になるためには、スキルの掛けあわせが大切です。
インドでさまざまな方と出会う中で、目標を達成する道筋はたくさんあるとも気づきました。
だからこそ、今後も柔軟性を大切に、どんどん挑戦しながら自分の可能性を広げていこうと思っています。
── 最後に、これから海外で働きたい方へのメッセージをお願いします!
一歩踏みだすにあたって、「根拠のない自信」を持つことは大切にしてほしいと思っています。
海外という未知の環境、急速に変化を続ける世界の経済情勢に対して不安もあるとは思いますが、みなさんが思っている以上に、私たちには大きな可能性があると思っています。
だからこそ、「根拠のない自信」だけは強く持って、一歩踏み出せるかどうかが、自律的なキャリアを歩むためのカギになると考えています。
尊敬するインド人の友人がかつて、「幸せな生き方とは、自分に嘘をつかない生き方だ」と言っていて、その通りだなと思いました。
これから海外で働きたいと思う方は、メリット・デメリットを分析・検討することは必要ですが、それ以上に自分の気持ちに正直になることも大切なのではないかと感じています。
私自身、初めての海外就職でインドに飛びこんだときは不安でしたが、貴重な経験ができて本当に良かったと思っています!
また、海外就職に限らず、一人の人材として「どう在りたいか」という観点でキャリアを選んでほしいと思っています。
「どう在りたいか」とは、その人の人生のテーマのようなものです。
何かをひたすらに突き詰めたい、地元と海外を繋ぐ人材で在りたい等、十人十色のテーマの描き方があると思います。
不確定要素の多い現代において、今後自分が目指していた業界・職種そのものがなくなってしまうことも起こりうるでしょう。
だからこそ、自分の人生というストーリーにおいて、どのようなテーマを掲げるのか、考えることが大切なのではないでしょうか。
人生で大切にしたい価値観や自分のありたい姿を今一度考え、その実現に必要なスキルや経験が得られるキャリアをぜひ歩んでください!
まとめ
いかがでしたか?
一人の人材として「どう在りたいか」という視点でキャリアを選ぶ大切さ
常に「若い人のキャリア支援に携わりたい!」という人生軸に従って、キャリアを選びつづけてきた森井さんの姿からも伝わったのではないでしょうか。
目標の実現に向けて、ときにリスクも恐れずに突きすすむ森井さんの姿に、私自身たくさんの刺激と勇気をいただきました。
また、インドでイキイキと働く森井さんの姿から、インド就職の魅力も伝わってくる取材でした。
森井さんの今後や海外で働きたい方へのメッセージも、不安はありながらも一歩踏みだした森井さんだからこそ伝えられるお話だと思いました。
森井さん、今回は貴重なお話をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございました!
新天地でのご活躍も心より応援しております。