ベトナム政治状況
1.政治体制は社会主義共和制で共産党の一党独裁
ベトナムの政治体制は社会主義共和制で統治体制は、ベトナム共産党による一党独裁制度です。ベトナム共産党の最高職である党中央委員会書記長、国家元首である国家主席、首相の3人を中心とした集団指導体制であり、現在の党書記長はグエン・フー・チョン、国家主席はグエン・ミン・チェットであり、首相はグエン・タン・ズンが担当しています。共産国ではありますが、北朝鮮とは違い独裁的な傾向は小さく、集団指導が定着していることが特徴的です。しかし、一党独裁であるため内部の腐敗は著しいと言われています。
2.ドイモイによる「市場経済導入」と「対外開放」
ベトナムは1986年にドイモイ(刷新の意)の導入により経済的な発展を遂げてきました。具体的には「市場経済導入」と「対外開放」の2本柱を中心にした改革で政治的な改革は含んでいません。特徴的なのは「社会主義指向型発展」の理念で、ドイモイの思想分野の一部で、民富や強国・民主・文明社会を掲げて発展するという理念です。これは中国が目指す改革開放路線を踏襲しているとの見解が強いです。
3.外交関係について
(中国との関係)
歴史的に常に中国からの侵略を受けてきたベトナムは、現在も南シナ海にある南沙諸島や西沙諸島の領有権問題も抱えており、関係は悪化しています。最近では反中国デモも起こっており、政治的な緊張関係にあります。
(アメリカとの関係)
ベトナム戦争という悲惨な歴史を持つ両国ではありますが、ベトナム政府は経済、外交などで対米接近を基本政策としており、米国との関係はある程度良好です。一般のベトナム人も、経済向上のためにはアメリカとの関係を緊密にするべきだと感じ、アメリカの観光客、企業代表などを歓迎しています。ただ一部の国民はアメリカに対して嫌悪感を抱いており、関係性については一概に良好とは言い難い面もあります。
(日本との関係)
日越両国の関係は「緩やかな同盟関係」と評され、経済関係を中心に良好な関係を築いています。ODAは日本が最大の支援国であり、日本のODAによってタンソンニャット国際空港やカントー橋、ハイヴァントンネルやノイバイ国際空港など、ベトナムの基幹インフラを建設・支援をしている。
4.社会不安と政治的な腐敗
経済発展著しいベトナム経済ですが、政治的問題や経済的な格差、麻薬、売春、環境汚染などの社会的な矛盾も問題視されています。一党独裁という抑圧的な政治体制のため、一見、国内政治的には安定しているようには見えます。しかし、一部Facebookの使用が制限されるなど、情報や報道については統制されているという印象を受けました。「国境なき記者団」が毎年公表する「報道の自由度調査」によるとベトナムは常に最下位から10位前後にランクインされています。